すぐに使える 実践事例集 平成13年10月-065/114page

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高等学校
 

理科(生物)

 
 
 

呼吸と成長の理解を促す観察・実習の工夫

−TTCを活用した脱水素酵素の実験を通して−
 



1 はじめに

これまで,脱水素酵素のはたらきを調べる実験では,青色のメチレンブルーが水素で還元され,無色になる反応が利用されてきました。しかし,この実験では,酸素があるとメチレンブルーが脱色されないので,空気のない状態で実験しなければならず,一般に,ツンベルク管という特殊な試験管を用いて空気を除くという操作が必要です。また,酵素液を抽出するために,組織をすりつぶす操作が必要です。このため,操作が複雑で失敗しやすく,実験操作にばかり目を向けやすいといった面がありました。ここでは,操作が簡便なTTCを用いて,脱水素酵素のはたらきを調べる実,験を紹介します。

 

2 TTCを指示薬として用いた脱水素酵素の実験

TTCとは,塩化トリフェニルテトラゾリウム(2,3,5-トリフェニルテトラゾリウムクロライド)のことで,細菌の検出や種子の発芽能力の測定に用いられる薬品です。水素と結び付くと,不溶性の赤い色素に変化します。
TTCを指示薬として用いた脱水素酵素の実験

(1)TTCの特徴

酸素があっても水素と結合するので,メチレンブルーのように空気を除く必要がなく,普通の試験管を用いて実験できます。また,生体の組織を保ったまま脱水素酵素のはたらきを確認することができます。しかし,光に当たると変性するため,遮光保存する必要があります。

また,水溶液にすると保存が利かないので,使用直前に溶液を調整します。濃度は1%程度で使用しますが,薄めて(〜0.3%)使用することもできます。ただし,薄めるとそれだけ色が変わるのに時間がかかります。次の表は,メチレンブルーを用いたこれまでの方法の場合とTTCを用いた場合を比較したものです。

TTC
メチレンブルー
・酸素があっても反応するため,空気を除く必要がない。 ・酸素があると脱色されないため,空気を除かなければならない。
・試験管を用いて実験することができるため、操作が簡単である。 ・ツンベルク管を用いると操作が複雑である。
・組織を保ったまま,脱水素酵素のはたらきを調べることができる。 ・組織を破壊しないと脱水素酵素のはたらきを調べることはできない。
・水素と結びついて赤変する。 ・水素と結びついて脱色されたメチレンブルーが、酸素の存在下で水素が奪われ青色に戻る。

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