研究紀要第6号 学習指導改善に関する研究 理科実験 - 001/036page
小学校教材「トリの卵」の実験
本 田 孝
T はじめに
ニワトリの卵についての学習は,学習指導要領の実施1年めでもあり,いろいろと研究された結果が発表されているが,ニワトリの卵という素材の特色からくる実験上のいろいろな問題とか,児童の学習過程や思考過程から考えた場合の実験の内容・方法をどうするか,など,まだまだ解決されない問題が多いようである。
ここでは,それらの全般について述べることはできないが,学習過程の中で行なわれると予想される実験観察について,教材の扱い方も加味しながら述べてみることにする。
U 素材について
「ニワトリの卵」という教材を正しく扱っていくには,ニワトリの卵という素材について知っておくことが,まずたいせつである。
1.卵のつくり
図−1
卵のつくりは,いわゆるつくりそのものを学習するということよりは,今後の学習の中で予想をたてたり,推論したり,実験したりする場合に必要だから知っておかなければならないものであると考えたい,とするならば,できるだけ簡単な表現で,数少なくということになるだろう。
( )が多くの教科書で使われている名称である。
2.温度と湿度
ふ化の温度によって,ふ化率は大きく左右される。卵のすぐ上の温度が38℃〜39℃であればよく条件の悪いふ卵器でも35℃〜39℃であればよい。
39℃を越すと胚は死にやすくなる。
湿度は,発生の様子を10日頃まで観察する目的であれば,特に考慮しなくてもよい。
湿度は,ヒナをうまくふ化させる場合に問題になることであり,ふ卵器内の相対湿度が40〜60%が適当である。湿度が高すぎると,ふ化は早いが,小柄で弾力性のないヒナになりやすい。
湿度が低い場合は,ふ化が遅れ,胚の骨形成がわるく小柄で羽毛の伸びのわるいヒナになりやすい。
3.転卵
転卵の目的は,胚膜が卵殼膜にゆ着するのを防ぐために行なうものであり,親ドリは抱卵しながら,常に行なっているものである。
転卵の標準は,初期から2週間までは1日2回朝夕180°回転,3週めより1日4回90°回転を行ない,18日めに転卵をやめる。
毎日一度とりだして卵重をはかれば,それで転卵したことにもなる。
4.卵重の変化
胚の発生がすすむにつれて卵重は減少する。その原因は,呼吸による物質代謝の現象がおこるためである。しかし,これを実験で確かめることはたいへん困難である。……後述
V 教材について
学習目標を分析すると,っぎのようなことが,内容としてとり上げられるのではないだろうか。
指導要領の目標の順序にしたがって記述すると,
ア.卵のつくりはどうなっているか。ヒナになる部分はどこか。養分になる部分はどこか。
イ.卵がヒナになるには,適当な温度・適当なしめり気,呼吸のための空気,などの一定の条件が必要である。
ウ.血管・心ぞう・目などができる順序にはきまりがある。胚が育つにつれて呼吸ははげしくなり卵の重さはへっていく。卵重,卵白の量も少なくなる。卵がヒナになるための適当な条件がそろえば,どの卵(有精卵)からも同じような