研究紀要第6号 学習指導改善に関する研究 理科実験 - 003/036page
1p×1pほどの窓を開けて,バクテリアが侵入しないように処理をしてふ卵し,その窓をとおして育つ様子を観察する方法や,(2)茶わんの中に卵を割ってそのままふ卵し,観察する方法などがあるが,両者とも技術的に慣れないと成功しにくいという難点があり,児童には無理である。
特に前者はたとえ成功しても,窓が小さいために,観察の範囲が限られてくるという欠点がある。
いちばんよい方法は割って観察する方法である。この方法だと,卵を数多く消費するという欠点はあるが,胚の成長の様子と卵黄卵白の様子,血管域の広がりの関係などがよく観察できる。
この場合でも,胚の成長のどの過程を観察させるのがよいかということが問題になるが,教材の目標と,児童の情意的な面を考慮して発生初期あたり(1日〜7日)がよいのではないかと考える。
それより以降は,視聴覚教具等を有効に利用することも考えてよいだろう。観察は一般には,血管の見える時期から行なわれているが,からだができはじめる1日〜2日あたりの胚の様子は,まさに生命の神秘さを感じさせるのにじゅうぶんである。
技術的にそれほどむずかしくないので,児童にぜひ見せてやりたいものである。つぎにその胚の観察法について述べてみよう。
(1)40℃に暖めた0.9%の食塩水の中に卵を割る。この場合の割り方は,胚がかならずしも上側にこなくともよい。
(2)ピンセットを2個使って卵黄表面の卵白を完全にとり去る。特に胚のまわりに卵白があると,(5)の作業で円環ろ紙が卵黄膜に密着せず,胚のとり出しに失敗することが多い。また,この際ピンセットで,卵黄膜を破かないよう細心の注意が必要である。
(3)胚の部分とその周辺が水面上に出るまで食塩水と卵白をスポイトで吸いだす。
胚が水面上に出たときには,胚はま上にあるように卵黄の傾きを調節する。
(4)ろ紙で円環をつくる。円環の中央部の穴の直径は胚の大きさより,わずかに大きいくらいにする。普通は6〜7oである。
(5)円環ろ紙をピンセットではさみ,円環の中央の穴の中に胚がおさまるようにしてのせる。
胚が穴からずれていても,円環は卵黄膜に密着したときは,ずらすことがむずかしい。
(6)円環の外側にそって,はさみで卵黄膜を円形に切る。(眼科用はさみがよい)切り終わったら,ピンセットで円環をはさみ,卵黄から静かに離すと,胚は円環にくっついたまま卵黄から離れる。
(7)時計皿に,40℃の0.9%食塩水を入れ,これに胚を円環のまま浮かし,卵黄の破片がついていれば,胚を損じないように注意しながら洗いおとす。きれいになった胚を円環のまま別の時計皿にうつし,解剖顕微鏡か,実体顕微鏡で観察する。透明な心臓の動きをとらえることもできる。