研究紀要第6号 学習指導改善に関する研究 理科実験 - 022/036page
だけ,天井の中央部(ヒートンの位置)を通るようにおう面鏡の向きを調整する。これを簡単に行うためには図−3に表わしたように中央から離れて通る(必ずヒートンの位置を通るよう振らせることは容易でない)場合,gとa,gとbがだいたい同じ距離になるよう調整してもよい。
調整がすんだら,天井のスクーリン(模造紙2枚)上の円を像が横切る点をチェックする(サインペンなどがよい)。この場合図−3に示したように振子が楕円運動しているから,内側から切る点と外側から切る点が異ってくる。そこでc,dの2個所をチェックしておき,その中央値を最初の運動方向とする。
正確なデータを得ようとする場合はストップウォッチを使用する。約5分あれば偏向角が充分に測定できる。
図−3ではe,fが切った点でこの中央位置とc,dの中央位置の間が偏向角となる。図−3 振子(豆球の像)の運動の軌跡。 (天井の模造紙)
(注)@最初の振子の運動の軌跡
A時間経過後の運動の軌跡
c,d,e,fは円を横切った点
4.検討
この装置は,懐中電灯の像を天井スクーリンに作ることにより振れを大きくし読みとることを目的としたものである。普通の教室の天井の高さは約2.6m〜2.7m位であり,実験台の高さが80pとすれば振子の長さは1.7〜1.8mとれる。教育センターで実験した場合を例にとると像は約20倍に拡大されている計算になる。いいかえると35m〜40m位の長さの振子を吊して測定している結果と同じになる。そのために微少の偏光角もよみとれることになろう。(図−1でb/aが倍率)
次に,懐中電灯の電球であるが,先端にレンズのついたニップル球(\40円)を使用すれば天井にピントをあわせ易い。
前述「はじめに」で述べた「フーコー振子拡大投影式」は振れの角(偏向角)を横から観測する方法であるため,豆球の像がスクーリン投影(すリガラス上〉されるとき大きさが常に変化しているために極めて読みとりにくいのが欠点であるが,筆者の方法はその点では素直でわかり易いと考える(教育センター研修講座で検証)。次に,精度について触れると,地球は1恒星日(約23時間56分4.09秒)で1回転している。振子を緯度の地点で振らせると地球が1回自転する間に振動面は
だけ回転することが証明(式の上での証明略)されている。それで振子の振動面が1回転する周期は
となり,福島県教育センターの場合,北緯37°47′54"であるので約39時間20分位で1回転する。赤道付近では振動面はまったく動かない。南半球では振動面の回転する方向は北半球とは逆まわりとなる。筆者の製作した振子によって偏向角を測定すると(3回平均)5分間で約0.8°偏向することがわかる。この結果と計算値を比較すると±0.05°の範囲の誤差内で測定できる。
このことから授業時間内に測定した結果(データ)をもとに仮説をたてたり,モデル化(45年度理科教育センター研究紀要参照)をし,地球の自転を推論させることが可能である。
V おわりに
今回は市販のフーコーの振子の検討結果にもとづき,それらの欠点を見い出し,安価でしかも短時間でデータを収集できる振子を何とか開発しようと研究を進めてきた結果を紹介したわけである。各校の授業の中で大いに利用され,その反省・批判を期待するものである。