研究紀要第9号 児童・生徒の社会認識に関する研究 男女交際・性意識についての考察 - 020/020page

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W.まとめ

 性意識の調査にともなう男女関係,マスコミの中の性などをとりあげてみると,性の問題は思春期になって初めて考えるのではなく,生涯教育として,幼児期に始まり,成人後もいろいろと研究指導を要するものであることを痛感した。

 人間としての男女協力関係を理解するときは,集団で男女共学することも必要であろうし,生理的な内容から集団・男女別の学習もなされよう。また成熟の早晩から個人差に応じた個別指導も大事である。
 マスコミの中の性の問題も,同級,同輩なら眼を輝かして観覧し,討論も活発となるのだが,親子いっしょではどうしても遠慮がちだという。
 最近の性情報の氾濫,宗教・道徳の期待外れ,社会制度の変化などのため,世界各国とも性問題について大きな苦悩をもっている。

 面接調査をしたとき,ある女子高校生は,「このような話し合いをしたいと思っていたのにその機会がなかった。きょうは,ほんとうに楽しかった。」と日ごろのうっぷんをはらしたかのような明かるい笑顔で語ってくれたことを思うとき,性教育の必要性を強く考えさせられる。
 貞操とか純潔というよりは,性教育の方が耳なれたことばで親しみやすいと高校生はいっているが,次のことを再度考えたい。

1.からだの成長と心の発達の調和をのぞみたい。
2.性に対する秘密をもたないで,明るい態度で接したい。
3.家庭内の不注意や油断が,子どもへの悪環境とならないよう配慮したい。
4.ゆがんだ性知識が多いので,正しく理解させるくふうが必要である。
5.性の欲求不満を昇華・解消させるよう配慮することがのぞましい。

 両親が子どもの実態を素直にうけとめ,問題行動があれば,親子関係に問題はないかを謙虚に反省し,子どもの善意を信じ,のぞましい方向に伸ばしてあげられるよう受容的な態度で接することがのぞまれる。あるいは,性意識を強く刺激する環境の中では,性教育は学校でお願いしたいという声も強い。

 公園や学校のトイレで,低劣な落書きをみたとか,ゆがんだ性知識から非人間的な性観を抱いたり,性的被害の犯罪記事から,みんなの力で何とかしなければと悩んだりしている。その悩みや疑問に答え,危機をのりきる対策を講じていくことこそ急務であろう。
 今後の課題として,医師,教師,学者,保健婦などによる性教育専門のチームが作られて,要望に応じて活動することがのぞまれよう。

(担当者 金 木 和 子)

======参考文献======

おとなへの扉を開く
    ―中・高校生の性― 
 ………  日本性教育研究会編
思春期の子どもの導き方  ………  暁教育図書会社
目覚める性の導き方  ………  日本性教育研究会
性教育  ………  全国教育図書株式会社
子どもの性の質問にどう答えるか  ………  羽仁説子著

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