研究紀要第10号 教育相談の事例に関する研究 教育相談の概要と面接・通信の相談事例 - 007/022page
U 事例研究
1,知能・学業に関する事例
(1) 知能検査による心理判定
語義 頭の働き。知恵の程度。大別して知的適応能力,理解・判断・抽象能力,学習能力の3種がある。 事例 知能検査による心理判定 特殊学級入級判定資料の作成 原因 (1)生来の素質などの影響 (2)乳幼児期の栄養障害の影響 (3)家庭の文化水準などの影響 治療 (1)生来の素質を伸ばす配慮をする (2)栄養障害などの排除につとめる。 (3)言語性,動作性の均衡をとる。 @ T・S (小2)
IQ 言語性91 動作性101 全96
(普通知)IQとしては問題ないが,消極的でことばがたりない。すぐ,かしこまって「はい」と返事し緊張する。数的観念に著しく欠ける,犬の足は「3本」1ダースは「1本」4円と2円では「5円」といった調子。
能力はあるのだから,足りないところを補ない,自信をもたせ,積極性を増せば伸びることであろう。A F・U (小2)
IQ 言語性91 動作性74 全80
(下知)言語性と動作性がアンバランスである。
従って団体テストではかなり低く出たことであろうと予測される。
経験を増やし,積極的にそれに取り組んでいくなどの指導が必要であろう。
経過の観察あるいは期間をおいて再テストが望まれる。B H・F (小2)
IQ 言語性112 動作性94 全104
(普通知)現実的な面でのいわゆる生活の知恵はかなりもっている。
抽象等,質的に高度の知的能力を示している。
いささかお調子にのるきらいはあるが,さらに情緒の安定を図ることにより伸びるものと思われる。C T・1 (小2)
IQ 言語性73 動作性72 全68
(精神薄弱軽度)もしくは境界線級
積木模様にやゝ高い成績を示す所を見れば今後の指導により,IQの向上を望めないものでもない。
きょうだいのことなど話してくれるが,ハキハキしない。消極的態度がみられる。
特殊学級での個別学習が適当と思われる。D K・H (小3)
IQ 言語性60 動作性64 全56
(精神薄弱軽度)判っているのか,判っていないのかも,わからない程,反応が乏しい。
符号問題で,ていねいに書き,いくらいっても,細部にかかわる。停滞して最初の一つをかくのに1分を要した。器質的な脳障害(てんかん)が推測される。特殊学級において心身の観察指導がのぞましい。E H・F (小5)
IQ 言語性91 動作性92 全90
(普通知)IQに比し,知識が乏しい.学習の仕方の指導が必要と思われる。
通学にかなりの時間を要するという。それにエネルギーをさかれるのかも知れないけれども,直観的な洞察力もあり,知的には問題がない。
普通学級で,級友の協力を得ながら個別指導で伸ばすようのぞみたい。