研究紀要第10号 教育相談の事例に関する研究 教育相談の概要と面接・通信の相談事例 - 008/022page
(2) 学業不振児(1)
意義 学業成績が下位で,素質的に能力の低い子と能力を発揮してない子 事例 勉強がきらい,努力するが学業が伸びない。知能のわりに不振 原因 (1)性格,対人関係 (2)学習のしかたの無理解 (3)身体的生理的条件 (4)環境そのたの悪条件 治療 (1)性格面の特性を考えた指導助言,対人関係の改善,自己統制訓練 (2)個人にあった学習計画と学習のしかたのくふう。悩みの相談。 (3)身体的生理的条件の改善 (4)家庭環境,親子関係の改善充実,教師との密接な連絡。
@ 在籍状況
氏名 性 所属 T・S 男 N中2年A 現症の概要
ア,知能は4の段階にあるが,学業成績は2の段階にある。
イ,まじめに学習しているが,消極的で応答も満足にできない。
ウ,学習に対する意欲がなく,集中力や深まりがたりない。B 現症の起始・経過
ア,小学1年の検査で,知能はS.S55(段階4)あるのに,学力はS.S44(段階2)である。
イ,悩みの調査では,学習に自信がない,友だちがいないことを訴えている。
ウ,親子関係では,父の厳格型に対して子は不安型の傾向がみられる。C 診断・指導の方針
ア,知能の割に学力が低く学業不振児とみられる。
イ,学習意欲が乏しく,学習のしかたが機械的であきやすい。
ウ,身体的には健康で,あらゆるスポーツに自信をもっている。
エ,社会性不足のため,交友の範囲がせまい。
● 養育態度の改善につとめる。
● 学校と家庭の連絡を密にする。
● 学級担任の事例研究的指導をする。D 治療・指導の経過
ア,運動に熱中させ,喜こびと自信をもたせた。
イ,学級の班内でリーダーになれる役を与えて活動させた。
ウ,面接相談をすすめて問題点の除去につとめた。
エ,本人のカにあった学習日課表をきめて計画的に学習させた。
オ,両親と面談して,本人の長所を理解し,不安感の解消にあたった。
カ,まず好きな教科の予習をして1日1回以上発言するようすすめた。
キ,進路指導を行なって,将来の目標と実現の可能性をもたした。
ク,学習技術の理解向上にっとめた。
ケ,毎日予習してくるようになった。
コ,建設的な意見を活発にのべるようになった。
サ,自主的な行動がみられるようになって,学力も知能なみに向上した。
シ,性格も親子関係も改造改善に向った。※ 面接相談を重ねてラポートを深め,学級や家庭の不安傾向を解消させ,得意なものを伸ばし,受容的態度で研究的に指導した結果で,担任と本人の努力をたたえたい。