研究紀要第15号 長欠児童・生徒 かん黙児童・生徒の治療的指導に関する研究 - 000_02/022page
ま え が き
学校における児童・生徒の実態を観察すれば,全く十人十色である。多弁な子どもがいるかと思えば寡黙な子どもがおり,積極性のある生徒がいるかと思えば極めて消極的な生徒もいる。しかも,これらの児童・生徒は混りあって一つの有機的学級集団を構成しているために、真の学級集団づくりには,集団指導のみならず,児童・生徒のひとりひとりをより正しい方向に伸ばしてやることを忘れるわけにはいかない。
教育相談は,よりよい学級集団を作り上げるための,児童・生徒ひとりひとりを対象とした心の健康をとりあげる仕事である。したがって,それら児童・生徒の実態をは握することなくしては,その目的も十分に達成することはできない。当教育センターにおいては,県内の小学校,中学校,高等学校の教員を対象にして教育相談講座を実施し,学校現場との連絡を深めてきた。しかしながら,児童・生徒の実態は,学校や家庭で考えているようなレベルや内容を越えて,バラエティーにとんだ数多くのケースを発生させてきている。このような点も考慮しながら,本年度は,県内小・中学校児童・生徒の長欠(登校拒否児)およびかん黙児の調査を実施してみた。
長欠児童・生徒(登校拒否)は,従来家庭的な事情によるものが多かったが,最近個人的な理由による長欠が急速に増加してきている。この傾向は,高等学校から中学校へ,さらには小学校へものびてきており,さらには市部・郡部を問わず発生してきている。これらに対処するには,単に学校を休んでいるといった現象だけでなく,児童・生徒の心理面・身体面,家庭環境,学校における生活の実態を総合的に考慮して積極的に指導対策を差しのべるべきであろう。
かん黙児童・生徒については,本県の場合かなり多いのではないかと思われる。今回の調査によれば,かん黙児は,今までの常識を破り,家庭の経済程度や学業成績などともあまり関係なく発生しているようだが,これは,その原因が複雑多岐にわたってきていることを示唆するものであるといえよう。東北地方の家庭生活には,まだまだ閉鎖的な傾向が残り,地域性から考えても今後に多くの問題を残しているように思われる。
これら長欠児童・生徒,およびかん黙児童・生徒が,各学校においてどのような状態におかれているのか,学校生活,学校の教育活動全般からみて,どのような手が差しのべられているのだろうか,また,発見もされず,指導も受けることなく重症に陥いてしまっているものはいないものか,さらには,このような子ども達が少しでも出ないための未然の防止対策がたてられているか,などを調査しまとめてみたものがこの冊子である。このような問題の解決のために,この冊子がひもとかれ,活用されることを望んでやまない。
本調査にご協力下された各市町村教育委員会,各教育事務所,各小・中学校に深甚なる感謝をいたすとともに,この冊子が皆さまのお力添えによって,一層広く活用され,現場の創意に満ちた実践の原動力ともなれば望外の幸せである。
福島県教育センター所長 白 岩 和 夫