研究紀要第15号 長欠児童・生徒 かん黙児童・生徒の治療的指導に関する研究 - 022/022page
かなりの重症になってしまってからである。「早目早目の治療こそ最良の治療」と考えられ,速かにその対策と治療を開始することが急務である。
治療(遊戯療法・行動療法・絵画療法・両親および生徒へのカウンセリングなど)は,就学前に最大の効果を上げ得るとされているが,就学後においても決して遅いとはいえない。しかし,就学後に治療を開始する場合には,前述の治療法に加えて,学校場面に不適応した結果としてかん黙が引き起されていることを銘記し,不適応場面としての学校を,治療的集団−治療的雰囲気をもつ集団に改めていく必要がある。
すなわち,不断一言も口をきかないかん黙児が,何かの機会に一言二言話しをした場合,みんなびっくりしてしまううようなふん囲気にならないクラス,クラス全体が精神衛生上よいふん囲気が高まっていく集団に作り上げていくことが必要である。
W かん黙児童・生徒のとりあつかいについての7つのポイント
1 かん黙児には,自閉症,重度精簿,精神障害,情緒障害,ろう唖,言語障害,などによって引き起されることがあるので,心因性かん黙か,その他の原因によるかん黙なのかの判別を図る。
2 明らかに心因性のかん黙であることが判明した場合には,以下の指導方法にしたがって指導をおこなう。
3 父母(特に母親)が非社会的で交際範囲が狭く,内向的性格の場合には,ノン・デレクティヴ・カウンセリングを継続的に実施しながら,対外的緊張感を取り除き,社会に向って自己を開くことができるように援助する。
4 母親が多弁で過干渉の場合には,しかり過ぎ,過干渉,自信衷失を引き起す言語の発言禁止などを,カウンセリングの場で話し合い,「……したら笑われる」「外ではしっかりしなさい」などの緊張感を増すような言葉の使用を控えるように努力させ援助する。
5 遊戯療法(初期段階ではグループ・セラピーは成立しがたい),絵画療法,箱庭療法などを実施する。
6 教師の協力
イ 学校恐怖症候のある子どもも特別あつかいにしない。
ロ 中学校や小学校高学年で,教科別担任制がある場合には,全教師がその子どもの気持ちをは握でき,共通の指導ができるように,事例研究会などを持つようにする。
ハ 教師の態度によって,思いやりのある学級が作られることを熟慮し,そのようなクラス作りに努力する。
ニ 学級全体として,明るく活気があり,自発性・積極性が高められる,精神衛生上よいふん囲気をもつクラス作りをする。
7 二言三言発語するようになれば,行動療法(段階的に行動を行なわせるよう賞罰を用いていくやりかた)により,発語場面を拡大していく。
(担当者星 正・佐藤守男)