研究紀要第16号 学習指導改善に関する研究 理科実験 - 020/020page
示している。平衡に達するのに約120分かかっており,生成のグラフとは大きく違っている。
表2 平衡定数
各温度における平衡定数を計算すれば次の表2のようになる。
温度℃ 70(T) 60(U) 50(V) 平衡定数K 3.16 2.45 2.00 log K 0.4997 0.3892 0.3010Kの理論値 (化学便覧による)
Kc=3.76 (76.3℃)
酸とアルコール当量のとき
平衡定数が温度が低くなるにつれて,小さくなっていることから考えて,酢酸とエタノールから酢酸エチルの生成する反応は吸熱反応であることがわかる。
logKを絶対温度Tの逆数1/Tに対してグラフ化すれば図4のように直線になる。
この傾きは,次の(1),(2)式により導かれる(3)式の傾き−△H/Rの値に相当する。
△G=△H−T・△S (1)
△G=−R TlnK (2)
(3)
△Hの温度変化が比較的小さく,温度範囲が余り広くない限り,(3)式のグラフは図4のようにほとんど直線になる。図4のグラフから△Hと△Sの値を求めると
△H=−5.92KCal/M
△S=−2.38KCal/°K
となり吸熱反応であることがわかる。高等学校ではエステル化反応の触媒に濃硫酸しか使っていないが,濃塩酸でも触媒作用があることを実験的に確かめ,共通したイオンとしてH3O+が触触の働きをすることを理解させるために,塩酸の場合の生成条件を探した。また,代表的な可逆反応の例として,温度変化による平衡定数の変化を測定し,それより△Hおよび△Sの値を求めた。