研究紀要第20号 高校生の精神衛生・特に自殺および自殺未遂行為に関する考察 - 020/021page
@ 死にたいと言う人に限って自殺をしない。
A 一度自殺に失敗したら二度と自殺を企てない。
B 自殺をする者はすべて精神病者である。
C 自殺は一つの病気である。
D 自殺は遺伝する。
E 自殺は貧乏人から起こる。
F 自殺は法律によって防止できる。(2) 自殺防止の指導
@ 死にたいという自殺念慮が察知できたなら,必ず個人面接を行なって,感情の浄化を図ることに努力する。
A 死にたいと口に出して言わなくとも,自殺の予告を,苦悩・不満・淋しさ,などの態度で表現することが多い。このような表現を見逃さないように注意し,個人面接で共感的理解をもつことに努力する。
B 一度自殺を企てた生徒は,再び自殺を企図する危険性は非常に高い。初回,緊急の手当のあとで,必ず精神科医の治療を受けさせること。
C 精神障害(特にうつ病)を有すると思われる生徒は,潜在的自殺者と考え,長期間の治療と,情緒面の変化の観察が必要となる。
なお,うつ病の症状を記述しておくので,このような症状を示す生徒がいる場合には,すみやかに専門医に診断を依頼し,治療を受けさせるべきである。
ア)不眠 早朝目ざめが早く,続いて,寝つきが悪くなる。さらに不眠が始まり,夜間に,うつ感が強くなる。 イ)食欲減退 うつ病発病と同時に,食欲が無くなり,食事に興味を示さなくなる,胃腸障害を訴える。 ウ)自発性と関心の喪失 以前に興味を抱いていた楽しみに,関心をもたなくなる。感動を失ってしまう。 エ)気分 気うつは自から認めず,尋ねられれば気分がよいと答えるが,つっこんで尋ねられると,落胆や不快感を認める。 D 精神療法を受けることに,本人,家族が偏見を持っていると思われる場合には,その恥辱感を取り除くように努力し,専門家に紹介を図る。
5 ま と め
「あの生徒が自殺するなんて思ってもみなかった」 「それ程まで思いつめる前に,どうしてひとこと相談してくれなかったのか」 こんな言葉が発せられることの無いような指導が十分に行なわれ,県下各高等学校から自殺生徒が生まれないことを願って,この調査と考察をまとめてみた。内容については不十分な点が数多く認められると思うが,その意とするところを汲んでいただき,学校現場での実践指導のために役立てていただければ幸いである。
自殺は「罪悪である」とか,「ひきょうである」,「自殺は防止することはできない」という考えがある。しかし,やはり自殺は防止しなければならないし,それは教師のつとめでもある。
自殺志願者という生徒たちも,心のもう一方の側では,本当は生きたい,助けてほしいと思っているのだ。この生徒を救うのはいったい誰だろう。誰が救わねばならないのだろうか。 (担当者 星 正,佐藤守男)