研究紀要第20号 高校生の精神衛生・特に自殺および自殺未遂行為に関する考察 - 019/021page

[検索] [目次] [PDF] [前][次]

3 自殺の心理

自殺者の心の中には,どんな自殺の例をとっても,(1)殺したい願望,(2)殺されたい願望,(3)死にたい願望が,程度の差こそあれ,必ず存在しているといわれている。特に若者の自殺には,(1)の「殺したい願望」の心理機制が強く働いており,老人のそれには,(3)の「死にたい願望」の心理機制が大きく作用しているといわれている。

以下その三つの心理機制と,青年期の自殺の心理について簡単な説明を試みてみよう。

 @ 殺したい願望

殺したい願望とは,敵意や憎しみの感情がすなおに表出されずに,心の中に抑圧された場合に,自殺というかたちで表現されてくる,破壊的な衝動である。

 A 殺されたい願望

殺されたい願望とは,殺したい願望が自分自身に向けて発動された願望であり,内向的で,自責の念の強い人ほどこの願望が強い。ある人に憎しみや敵意を有しながら,そのような憎しみや敵意を持ち,相手をやっつけてしまいたいと考えた自分に強い罪悪感を感じた場合,心の中に過度の緊張と葛藤を生み,それに耐えられなくなったり,その緊張からの脱出するために自己の抹殺を望む心理である。

 B 死にたい願望

死にたい願望とは,上記の二つの願望に比較して,非常に慢性的に作られてくるものである。いろいろな苦悩や葛藤のくり返しが,自信そう失や絶望感,疲労などを生み出し,それが厭世的な精神状態を作り上げ,ついには,死んだほうがましだという願望に変ってくる心理機制といえる。

以上の心理に加えて,若者独自の自殺の心理には,(1)死を純粋なものとして美化する(2)社会的な責任が少なく(大人に比較して)死に対する罪悪感が薄い(3)孤独感を楽しみ易い(4)行動がエネルギッシュなため,短兵急に極限まで行動が走り易い,などの特性が見い出せる。

なお,青少年の自殺を,それが意味するものから三つに大別して述べてみる。

 @ 逃避のための自殺

苦しみや圧力に耐えられなくなって,現在の状態から逃れて,苦しみのない世界を求める自殺である。
学業に自信をなくして:叱責や批難を恐れて:失恋の痛手に耐えかねて:受験の失敗:将来に希望がもてず,などの動機の自殺など

 A 攻撃・反抗のための自殺

身近な関係にある人に対する敵意や憎しみなどが内向し,自分の死をもって相手に復讐をはかる,最も攻撃的な自殺である。
発作的な自殺が多いが,遺書を残し,明確に復讐の意図を表すことも少なくない。

 B 憧憬・空想からの自殺

青年の自殺にのみ見られるものである。死へのあこがれ,好奇心,あるいは死の観念の美化から死を求める自殺である。

 

4 自殺防止のための指導

 (1) 自殺についての誤った考え

自殺防止の指導にさきだち,教師自身が自殺についての誤った考えを改めなければ,正しい指導を行うことはできない。そのような意味あいから,世間一般にいわれている,自殺に関する誤った考えかたのいくつかを列記したので,銘記された上で生徒指導に役立ててほしい。


[検索] [目次] [PDF] [前][次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。