研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 001/062page

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1 研究の概念

 教育の理論と実践において,その接近化を図ろうとする営みは,それぞれの分野で試みられている。

 教科における学習能力の発達に関する研究について,私どもは,視点を授業に求めようとした。学校における授業は,日常的かつ継続的なものだけに,教育理論だけの先行は許されない。従って授業の実践面,または,これにつながる教育活動にスポットを当てて研究を進めることにした。

 授業には,教える人があり,これを学びとる子どもがいる。そこには,常に教材があり,教材には,わからせようとするレベルのゴールが設定されている。このゴールを求めて教師と子どものコミュニケーションが展開する。学習能力の形成を授業に求める基本的な考えは次の通りである。

(1) 子どもの動きに即応する授業の展開

 教える授業から、学ぶ授業への傾斜は,最近叫ばれているところである。授業が単に教える活動だけに終始するものでなく,子どもの学ぶ活動を尊重する配慮が大切であり,学習の過程において,子どもの反応・思考・発言等の動きに即応する柔軟な指導態度を忘れてはならない。

(2) 授業の内面的な充実を図る。

 一般に授業において,子どもの現象面に目を奪われて,形式的に授業を流す傾向があるとすれば,子ども自身の学習能力の伸長は図れない。一人一人の子どもの個性的な思考の発達を促すための指導を行いながら授業そのものの内面的充実を図らなければならない。

(3) 授業における子どものつまずきの原因をすなおに受けとめる。

授業において,つまずきが,意に反して多ければ,計画性に乏しい。また,あまりにスムーズであれば,個別化がはばまれる。授業者に,テーマを持たせたり,指導方法上の注文を付すと非常に重荷に感じるようである。授業におけるつまずきは,ある条件の重複・矛盾・欠落などが原因して様々な形であらわれる。教師は,このつまずきを避けて通ってはならない。
授業における分節、授業過程における抵抗点などを想定しながら授業における子どものつまずきを素直に受けとめてその指導に対処する心構えが大切であろう。

2 研究のねらい

 学校における教育の道すじは,図(1)のように考えることができる。

・学校における教育の道すじ  図(1)
学校における教育の道すじ

 学校における教育活動の有効な手段は,授業である。授業の価値と重要性を深く認識し,授業そのものの科学性・実証性を事実に即して考えなおしてみるところに私どもの研究のねらいがある。その骨子となるものは,次の通りである。

(1) 子どもの学習能力の形成過程を授業によって明らかにする。

 子どもの能力は,潜在的であり無限の可能性を秘めている。しかも相対的に見れば,子ども一人一人の特有の能力は,開花する可能性をもっている。これらの能力が刺激され,形成されて行くのは,授業の過程そのものにあると思われる。従って教科における授業を通じて,そこに形成される諸能力に眼を向けたい。

(2) 授業において,子どもの学習能力の育成される機会や場を究明する。


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