研究紀要第22号 児童・生徒の学習能力の発達 学習能力の発達と授業の研究 - 002/062page

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わからせたい内容や方法を学習のゴールとすれば,その達成度は子どもによって差がある。ゴールそのものと,この達成度の誤差が少ないほど授業は成功していると言えよう。しかし,教材の種類,教師の指導方法,子どもの理解する遅速の程度に左右されることが多い。授業の分節において,ひとつの理解が深まり更に高い分節の学習に進むことが出来るとすれば,その発展の契機になった原因は,何であったかを分析的に研究を深めたい。

(3) 子どもの学習における思考のすじ道を,その前提となる能力のは握において明確にする。

 学習内容の適切な習得を図るためには,子どもがその前提となる能力をもち合わせており,教師はこの実態を知らなければならない。学習を進めるに当たり,ゴール達成のために働く先行的経験,およびその経験によって得られた知識・理解・技能等をもって前提能力と考えたい。一般に学習はこの前提能力の上に,子どもの思考活動が連続的に発展しゴールに限りなく接近していくものと想定される。

3 子どもの能力

 私どもの研究対象としての能力は,学習指導を通じて形成される能力をねらいとしている。能力は,一定の完成した形を持つものでもなく,特定の訓練の成果そのものが能力でもない。即ち,各種の能力と呼ばれているものが結合し続いている状態が能力であるとしている。しかも,これらの各種の能力の自由な結合,それを可能にする教育内容,それを可能にする教師のあり方を一つ一つ築いていく事が必要であるとしている。(浜田陽太郎氏)

 学習指導を通じて,形成される能力は,知識・技能等の育成を通じて人間の能力としての幅広い学力がそれに当たるというのは,広岡亮蔵氏である。これらの説を中心にして,学習能力を次のように考えたい。(表1)

・学習能力 表(1)
基礎的な知識・技能 知識・理解・技能
学びとる力・方法 思考力(事実解釈・関係は握・探究・創造的・論理的思考等)
観察・実験・操作・選択・情報処理
考え方 の態度
感じ方
行い方
知識・理解・技能・情意的な高まり・興味・心意的傾向・論理的態度
転移能力(このような学習によって養われ,転移する能力)

 このような考え方で学習能力を整理すれば,学業に必要とされる特殊な能力として能力をとらえるグットの立場,学習を速める特殊技能として能力を説くE・Aフライシマン,または,能力は継続的なものであり完成や終了するものでないというデューイの考え方が,この際特に参考になる。

4 研究方法上の学習能力

 研究推進上からみて,学習目標と,これを達成するための前提となる2つの能力を考えることが便利である。即ち,学習目標(ゴール)そのものを含め,ゴール達成に至る過程にはたらく能力が考えられる。
これを「A能力」とする。

 また,先行経験によって得られた能力で,A能力に貢献し,寄与する能力,即ち,ゴール達成の前提にはたらく能力が考えられる。これを「B能力」とする。図(2)

 ・B能力とA能力(図2)
B能力とA能力


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