研究紀要第24号 中学校 福島県診断標準学力検査問題分析結果報告書 - 013/106page
{ 2 柔和 31.9% 14 執る 41.0% 10 繕う 48.6%
二 { 3 掲載 41.7% 1 装う 44.4% 2 悔いる 48.1% 4 省く 48.8% となる。
ここには,1年の場合のように日常性がないとばかり言いきれないものも含まれている。くわだてる,はぶく,かえりみる,などは,中学2年ならば普通に使うようになっているはずである。とすれば,何が原因なのであろうか。推定できることは,漢字で書かれることがすくない,ということである。この推定が正しいかどうかは,これらの漢字の語句の意味がどの程度理解されているかという調査をまたねばなるまい。
イ 【2】読む(語句)
1年よりも高い正答率を示している。低いものは,一の3の暗示,一の7のおもむろ,二の5の快方などである。1年にくらべ「辞書的意味の理解」が低くなっている。ひきかえて,文脈の中の語句の意味,同音訓の異義語などは,ほぼ1年と同様である。中学以上では,語句の辞書的意味は多少わからなくとも文の中ではその語句の意味がわかるということであろう。ただ,それが文・文章の理解につながるということは必ずしも言えないと思う。それは,概観にあらわれた数値をみれば容易に理解されるはずである。
ウ 【3】読む(文・文章)
「事実と意見を区別して読む」ことや「段落や場面をつかむ」「文・文章の続き方がわかる」
「表現を味わう」が低く,主として説明的文章の読みに問題点があるようである。これは,小学校以来,物語的文章の読みに比重がかかっているか,または説明的文章も物語的文章も同じような読み方を学習させているかのどちらかである。
さらに細かく見ると,文の成分関係に関する小問はきわめて低く,その分野の習得状況について検討する必要がある。
とくに助動詞,助詞に関するものよりも,主述関係,修飾・被修飾関係,指示語,副詞に関するものの正答率が低いのは,一般に予想されるものとはちがうようである。
エ 【4】書く(文字)
同音異義の類似形の字を書きわける問題が極端に低い。「懐」と「壊」の書きわけであるが,いずれの字も低い正答率である。ということは書きわけることより以前に,まず書けないということなのであろうと思われる。学年をおって文字を書く問題の正答率が低くなるという原因は一体何なのであろうか。読むことからの「はなれ」を意味するのであろうか。ともかく確実に言えることは中学2年としての文字を読む力が形の似た字についてとくに低いということである。してみると,漢字の表意性に注意がはらわれていないこと,とくに漢字の構造とその表意性との知識がないことが原因といえそうである。
オ 【5】書く(語句)
ここでは「文に応じて語句を使いわける」習得力のみを見ているが,かなり高い正答率となっている。書くことの領域の「文字」「語句」「文・文章」の中でもっとも高い正答率を示している。
これは「読む」分野でも同様の結果となっており,語句の「読み」「書き」だけは,小学校の結果から通してみてもそれほど変動がないようである。
文字の「読み」「書き」の学年ごとの変動のはげしさと対照的な結果といえるだろう。つまり語句の学習の定着率なり転移率はかなり高いということになる。
カ 【6】書く(文・文章)
中学1年よりは上向きであるが,小学校低学年高学年の正答率の高さにはいたらない。とくに内容の点でみると,「文の成分のかかりうけをきちんと書く力」がおちているようであるし,文章のくみたて方,推考のしかたに弱さがあるようである。
読むことでも,主述関係,修飾・被修飾関係,副詞の使用などがよくできないという結果がでたが,書くことでも同じ結果がでてきている。
このへんに本県の中学生の国語力の問題がありそうに思う。もっとも,中学3年の結果をまたねばまだ何ともいえないだろうし,この問題の究明のための調査やテストを繰りかえし,客観的な立場からの考察をしてみなければはっきりしたことはいえないであろう。