研究紀要第25号 学習指導に関する研究 - 051/060page
えられるが,本調査による限りでは,女子教員に担任を受けた年数が長ければ長くなる程,男子生徒は男性化の傾向を強め(性度テストの得点が高くなる)女生徒は女性化の傾向を示しているという結果が得られた。
さらに,これを性度テストの中の5つの下位テスト−噴怒・恐怖・嫌悪・同情・邪悪−における得点から分析を加えれば次のことが推論される。
@ 男性度・女性度を決定する要因と考えられる5つの項目のうちで,憤怒および邪悪の項目に関しては,女子教員の担任年数が長くても短かくても,あまり変動がなく,男子生徒と女子生徒間の得点平均にも差がほとんど見られなかった。
A 嫌悪項目については,女子教員の担任年数が長くなればなるほど,女生徒の得点平均が下降の傾向を示していることが認められた。このことは,女子教員に習った年月が長くなればなる程,女生徒達は,“いやな場面"にそう遇した場合の反応が,より女性的になる傾向を帯びてくると推論される。
B 同情心については,男女生徒共に,女子教員によって担任を受けた年数が長くなるにつれて,得点が高くなり,男性化する傾向が強く認められた。特にこの傾向は男子生徒にいちじるしい。
C 恐怖心の項目については,一番顕著な差異が男女生徒間に認められた。すなわち,男子生徒については,女子教員の担任年数が長くなればなる程,得点が高くなり,男性化してくる傾向がみられ,女生徒については,得点が低くなり,女性化の傾向がみられた。
以上は性度テストの中の5つの下位テストからの分析考察であるが,さらに,1−2年,3−4年,5−6年,1−3年,4−6年,中1−3年の6段階に担任年度を分割して女子教員の担任と児童・生徒の性度テストの得点平均を考察してみたい。
2年間あるいは3年問に分割してそれを考察した理由は,小学校低学年,中学年,高学年,中学校とわけて考えてみて,いずれの時期に女子教員に担任された生徒が一番その性格変動を受け易いかを分析するためである。なお,現在の小学校においては,2年ごとのクラス担任の変動が一般化されており,この観点からの分析がより必要と考えられたためでもある。