研究紀要28号 両親および教師からみた現代の小学生像 - 001/023page

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両親および教師からみた現代の小学生像の研究

1.はじめに

 昭和51年11月下旬,福島・郡山・会津若松・いわきの4市より各3校の小学校を抽出し,両親および教師が持つ児童観,しつけに関する悩みや問題点などの実態調査を実施してみた。この調査のねらいは,子供に対するよりよいしつけとはどんなものか,またよりよい教育とはどんなことかを,両親と教師が共にしつけや教育の原点に立ち返って考え,さらに一歩進んで子供の心をよりよく知り,適正なしつけや教育のあり方を探る手掛りを得ようとして試みたものである。

本調査の子供の実態は,おとなからみた子供ということもあって,真に子供の心をとらえているとは言い難いものがある。だが,両親と教師が子供のしつけや教育について,共通した悩みや問題点のあることを知り,おたがいに考え,話し合って,共通目標を樹立するための資料としては,十分に役立つものと信じている。

 近年,両親(主に母親)が子供を養育する上で,誕生から3歳までの間の母と子のスキンシップが特に大切であることが再認識され,強調されてきている。しかし,社会情勢の激変に伴い,経済優先の風潮が母親の共働きを増加させ,母子のスキンシップの欠如の傾向を生み出してきていることは残念なことである。しかも自立性は乳児のうちから養えとばかり,スキンシップの大切さを経視して育児を行う母親の多いことも,スキンシップの欠如の一つの原因として見逃せない。

 また,最近情緒障害の子供が増加の傾向にあり,当センターへの相談件数も増加の一途をたどっているが,これらの子供の治療研究を通じて知り得たことは,親子の肌の触れあいの大切さである。肌の触れあいの欠如が,これらの子供たちの障害の大方の原因となっているとしか思えないケースが多いことである。

特に,テレビやステレオなどの人工的な音声を出す機械に育児をされた子供,テレビやステレオに子もりをされた子供にそのような問題が多く生じている。自閉(症)児がその典型的なものである。両親の声には全く無関心であるが,テレビのコマーシャルには反応する。耳は聞えているが,名前を呼んでも無反応である。一人遊びが大好きで,友達との接触を嫌い,奇声を発して遊ぶ。人と視線が合わず,知的な欠陥は無いのに言葉が無いか,あるいは始語が極めて遅い。数字や漢字など特定のことに異常な興味を示し,固執すること等から,両親は知的にはすぐれているので,そのうちいつか言葉を覚えると期待を持つようである。しかし,いつまでも言葉が出ないと,気がついてあわてたころはすでに手遅れとなる。スキンシップの大切さを痛烈に感じ,手直し保育が始まるが,あとの祭りである。

 昨今,小学生の非行化が目立ってきているがこれは,子供をとりまく環境からの有害な刺激が大きく影響していることはいなめない事実である。
その上子供の身体的発育が非常に早くなり,精神の発達が,これに伴っていないことが子供達を不安定にし,非行の一つの原因を作り出していることも確かなようである。

 さらに,受験体制の強化も知育偏重の教育を生み出し,家庭におけるしつけのあり方にも大きな影響を与えている。即ち,子供に対して過保護,過干渉になったり,単に子供を塾に通わせることで,自己満足してしまうような家庭が激増している 以上思いつくまま教育上の問題のいくつかを断片的に述べてみたが,本調査研究が,それらの問題解決の一助として,少しでも役立つことを願いつつまえがきとする。

 

2.調査目的


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