研究紀要第29号 学習指導に関する研究 - 117/118page

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に対応した生き方,考え方であり,北川氏は「将来の情報化社会には,従来の農業や手工業の時代とは異なった常識(価値体系)が必要である。そして情報化社会を定着させるためには,なによりもこうした価値体系,つまり常識を拡散することである。これを私は情報マインドと言いたい。」と述べている。

 このことは,とりもなおさずコンピュータの本質を的確には握し変動する情報化社会を主体的に生きていける人間の育成を目指すものであり,具体的には,コンピュータの本質とその基本的機能の理解を通してアルゴリズムを極める能力を養う。さらに情報化社会の意味を理解し,そこで正しく情報化社会に適応できる能力と態度を養成する。これが情報処理教育の目的である。

(4) 体験学習としての情報処理教育

 授業は生徒の興味を換起し学習意欲を起こさせるものでなければならないが,なかなかむずかしい問題である。コンピュータを用いて行う情報処理教育は,生徒にとって自主的に取り組む学習の場であり,自主的に問題を解決していく過程であり,仕事の楽しさや完成の喜びを体得する機会でもある。知識の習得のみに偏りがちな学校教育の中でこのような教育を広くとり入れていきたい。

 特に動作性の知能に優れ,行動的思考力を有する生徒にとっては,体験学習を通して論理的な思考力がつき,興味がわいてくる。

 また,コンピュータという論理機械による算法,つまり与えられた問題解決のためのデータ処理手順を見つけ出していく過程で,思考訓訓練が行なわれ,それが創造性を高めることにつながる。完成したときの再びは大きく,次の授業をまちのぞんでいるといった,従来の科目と違って考えることの楽しさ,つくりあげることの喜びを生徒自らが味わうことになるだろう。

 「職業教育の改善に関する委員会報告」が5月21日発表されたが,そのなかの大きなポイントのひとつとして述べられている「職業学科における教育の特色をなすものは,実験・実習等の実際的・体験的ないし探策的な学習である。」という考え方は非常に重要なことである。

 体験の積み重ねから一つの理論を身につけていくこうした学習の方法―体験学習―は,今後ますます有用なものとなるであろう。

4 むすび

 「職業教育の改善に関する委員会」の最終報告のなかで,とくに専門教育の改善については専門分野について,できるだけ共通な基礎科目を新しく設けるという科目のあり方について検討することになった。

 工業においては,共通的な基礎として情報処理教育をとらえるという試案もあり,今後検討材料として研究を深めていく必要があろう。

 商業でも,情報処理教育を基礎教育の一つとして位置づけ充実をはかろうとする機運が盛りあがっているという。

 新しく教育課程が改善されようとしているなかで,情報処理教育の推進はきわめて重要な課題であり,情報化社会と情報処理教育という問題をその原点をたどり歴史的に明らかにしてきたことは,情報化社会に今後いかに対応していくかの基本をさぐったことにならないものだろうか。

 

◆ 参 考 資 料◆

日本の知識産業
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片方善治・佐貫利雄著
コンピュータ社会と教育
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増田米二著
情報の活用法
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情報化社会
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林雄二郎著
知識社会の構想
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田中靖政著
コンヒピュータ白書’75
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日本情報開発協会編
教育におけるコンピュータの利用
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秋山 穣・岸 俊彦共著
情報教育No.8
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全国情報処理教育研究会
予測・日本経済
  5年後・10年後の産業構造
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矢野誠也著

(担当者 桜井 正一)


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