研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 016/092page
考えられる。
意識・能力の発達は,個人差が大きいものであり,生活環境の異なる地域もあるので,中学2年生の段階においては,弾力的に取り扱えるように関係・事実と発展・関係の二つの融合単元と二つ角度をおさえた。第3学年の最終段階に融合単元「これからの日本と国民」をおいたのは,社会科目標達成のしめくくりとしてであり,義務教育終了の段階における日本国民としてのありかたを地理的,歴史的分野で習得した意識・能力はもとより,公民的分野で学習したすべてのものを活用させ,学習させたいからである。
この融合単元は,発展的な角度から意識・能力の発達を促す段階であり,資料活用・作成を中心にした問題解決的学習を展開させたいものである。
このように,生徒の意識・能力などの発達を促進する計画的な指導を取り入れた地歴並行学習と地歴両分野のみならず公民的分野を融合した問題解決的学習をとり入れることによって社会科指導の発展を期したい。
図5 試案図
6.おわりに
地歴並行学習は,形式の時期から実質の時期に飛躍する。その時期が今回の学習指導要領改訂の時期であると考えたい。
この試案を実践に移すには,幾多の問題が予想される。試案の中の単元を指導するための時間の確保は,その問題の一つである。その解決のためには指導内容の精選ということがあげられる。また,試案の中の単元は具体化されたものではないので今後の研究が必要である。それには,生徒・地域の実態を十分には握できる現場教員の活躍によるしかない。幸いにして,新学習指導要領は,指導内容の削減につとめ,大巾に各学校の実態に応ずる指導を進める方向にあるので実践の見通しは明るいと思う。
最後に,この研究にあたって,資料を提供くださった岩手県立教育センター大山恒男氏ならびにアンケート調査にご協力いただいた県内の先生方に謝意を表したい。