研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 053/092page
高校有機化学教材に関する考察 アニリンの合成とその検出について 佐 久 間 善 克 (第2研修部)1.はじめに
高等学校における有機化学は現在ほとんど化学Uの中で取り扱われている。現在,化学Uの教科書は11社から出版されている。その中で取り上げられている有機化合物の合成はいくつかあるが,従来から代表的な反応の一つとして扱われてきたニトロベンゼンを還元してアニリンをつくる実験について,次のようなことを行なった。
教科書に指示された方法で合成し,生成物をガスクロマトグラフィー(以下GCとする)で分析してその生成量を比較し,実験方法を検討した。
また,普通高校ではGCがないので,この分析方法は授業に応用できない。そのため操作が非常に簡単でしかも短時間で鋭敏に混合物の分離ができる薄層クロマトグラフィー(以下TLCとする)を用いて生成物を分離・確認する方法についても検討を加えた。
2.アニリンの合成方法について
ニトロベンゼンの還元に通常使用される還元剤には,いろいろなものがある。しかし教科書では,表1にまとめたように,実験室的製法にもっとも便利な還元剤であるスズと塩酸の混合物で実験を行なうようになっている。
出版社 ニトロベンゼン スズ 濃塩酸 エーテル 反応条件 A1ml 2〜3粒5ml 5mlおだやかに加熱,油滴がなくなる。 B1 1〜2粒5 2〜3mlおだやかに加熱を続けて,油滴がなくなる。 C0.5 3g
小さく切る3 5mlよく振りながら弱火で暖ため,激しいときは水で冷やす。よく振りまぜ油滴がなくなる。 D1 1〜2粒5 2ml油状の物質がなくなるまで加熱した後冷却する。 E0.5 約3g
細かくする3 3〜5ml油滴が見えなくなるまで弱い炎で加熱 Fベンゼン2mlから生成したC6H5NO2を使用する 約3g5 使用しない 温湯であたためながらよく振りまぜる。
激しく反応し,油滴がほとんどなくなる。 G 5〜6粒5 使用しない 温湯であたためながらかきまぜる。
油滴がほとんどなくなる。表1 教科書に示されている試薬の量と反応条件
生成したアニリンは各社ともエーテルで抽出して,その後,さらし粉溶液による赤紫色の呈色か,重クロム酸カリウムによる黒色の呈色を利用して確認している。
3.分析方法の検討
(1) ガスクロマトグラフィーによる分析
装置は島津GC4-BPTを使用した。
カラムBenton34(5%) SiliconDC200(5%)