研究紀要第33号 学習指導に関する研究 - 058/092page
思う。そのため,4,5あたりは水素が激しく発生しているときは,加熱を中止しても十分反応を続けている。
表8の結果をグラフにすると,図7のようになる。このグラフから次のようなことがわかる。
図7 スズの量と各生成物の量的関係
A:アニリン B:ニトロベンゼン C:副生物 D:A+Cアニリンの生成の割合は次第に増加するが,その増加の割合は小さくなっていき,グラフはほぼ水平に近くなってくる。スズの量が5g以上になると,ほほ90%位のアニリンを含むことになる。
o−化合物とp−化合物の含有率の和はほぼ直線的に減少する。
未反応のニトロベンゼンの含有率は急激に減少する。濃塩酸8uでスズの量が5g以上になるとアニリンは約90%位しか含まれないが,o−化合物,p−化合物を含めればほぼ100%近く反応が進んでしまうことがわかる。
スズが多くなると水素の発生は,非常に激しくしかも長い間発生するので,反応はスムーズに進むようになり,副反応が起こる割合も少なくなってくる。更に利点は,水素の発生が激しいので加熱は最初のうちだけで十分なので温度もあまり高くならないし,突沸という現象を防ぐことができる。
実験 ニトロベンゼン1mlにスズ3gを加える。
濃塩酸の体積は6mlから始めて10mlまで1mlずつ増加させる。
その他は,前の実験と同じように行なった。
結果と考察
エーテル抽出液中の生成物のモル比は表9のようになった。
HCIの量 反応したスズ アニリン ニトロベンゼン o−クロロアニリン p−クロロアニリン 6 6ml 1.40g 0.55 0.40 0.03 0.027 7 1.50 0.78 0.15 0.04 0.048 8 1.64 0.84 0.10 0.06 0.089 9 1.67 0.78 0.04 0.07 0.1010 10 1.75 0.71 0.07 0.09 0.14
表9 塩酸の量を変化させたときの生成量6以外の溶液は,反応後透明な溶液になってしまったので肉眼ではニトロベンゼンが未反応のまま残っていることを確認できない。
塩酸の量が多くなるにつれて水素の発生は激しく長時間になってくる。しかも,前の実験のときと同様に加熱は最初だけでよく,水素の発生が始まると加熱を中止しなければならなかった。
表9の結果をグラフにすると,図8のようになる。
図8 塩酸の量と各生成物の量的関係
A:アニリン B:ニトロベンゼン C:副生物 D:A+C塩酸が8mlのところでピークをつくり,それ以上の塩酸ではむしろアニリンの含有率が低下しいいる。未反応のニトロベンゼンは塩酸が増加するにつれて急激に減少している。
o−化合物とp−化合物の合計の含有率がほぼ直線的に増加している。そこでアニリンとo−化合物,p−化合物の和を求め,塩酸量の増加との関係をみてみると8ml以上では90%以上の含有率になることがわかる。