研究紀要第34号 授業研究に関する基礎調査 本県小・中学校における授業研究の実態 - 000_02/018page
ま え が き
このたびの調査に対し,県内各小中学校から全面的な御協力をお寄せくださいましたことは,各先生方の御理解と関心の深さのしからしむるところと,心から感謝申しあげる次第であります。また,各学校におかれましては,それぞれ「よりよい授業」の実現をめざし,全校あげて授業研究に取り組んでおられる様子,なによりも心強く存ずる次第であります。
ところで,私どもも授業研究に取り組んでみてつくづく感じますことは,授業」という「実体」のいかにつかみにくいかということであります。授業は「教師」と「子ども」と「教材(学習内容)」をその主な構成要素として成りたっておりますものの,さらには,教具,機器,資料等,その他さまざまなものが関与して,極めて複雑多彩な様相を示すからであります。したがって授業については,自然科学の事象の研究のように,入力と出力との間に一定のきまりや法則を見いだして,その関係を客観的には握したり一般化したりするということが大変しにくいものであります。
ある学者の方が申しますには,このような複雑な授業に的確に対応できるシステムを準備するとすれば,それはかつて月世界を征服したあの巨大なアポロシステムの一万倍以上の,全く気の遠くなるほどのものが必要だということであります。
このことからしても,限られたほんのわずかの時間内で,授業をあらゆる角度や視点から分析追究しようとする授業研究のあり方は,その意気込みは多としても,しょせん無理なことで,その結果は実り多いものにはならないようであります。既にそのすじの研究者や先進校の提案による手法を,まんべんなくなぞる程度のものにとどまってしまうことは,これまでの多くの実践例が示しているところであります。
さいわい,この調査の中には,このような従来の授業研究に対する貴重な反省やら,あるべき方向についての示唆に富んだ回答が数多く寄せられておりますので,それらを次年度の研究基盤にすえて,限られた時間の中でも本質を突く授業研究ができるような授業分析のあり方などについてまとめていきたいと考えております。
昭和54年3月
福島県教育センター所長
佐 藤 信 久