研究紀要第35号 学習指導に関する研究 - 002/066page

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作って遊ぶ活動を通しての指導の一考察

−小学校1年「動くおもちゃ」における授業展開の例−

神 山 道 夫 
(科学技術教育部)

1 は じ め に

 低学年の子どもは,自然に接することを喜び,自然の珍らしいもの,未知のものへの好奇心が強く,みずから手を出し,いじくり回し,体を通して経験していくものである。このような発達特性を持つ低学年の理科指導では,体を動かして自然の事物・現象の中にたっぷりとひたらせ,それに親しませながら,それらを見たり,探したり,作ったり,育てたりする具体的な行動や体験を通して,子どもたちが夢中になれる活動の場を作ることが必要である。

 低学年の理科では,これまでも「遊び」や「活動」が導入されてはいたが,内容の理解を系統的に積み上げることに重点が置かれ,子どもの自発的な活動がともすると軽視されがちであった。

 新学習指導要領では,「………を使った活動を工夫させながら………の特徴に気付かせる。」と述べられているように,活動を工夫し,物事に熱中すること自体が低学年の理科のねらいであり,このねらいを達成すると同時に,「その特徴に気付かせる」という能力目標が達成されるという。いわば自然の事物・現象に直接はたらきかける活動を重視し,その活動に熱中できる授業を実践することが大切である。

 低学年の子どもは,具体的な活動,とりわけ製作活動が大好きであり,おもちゃ作りなどはそれに熱中して活動する。また,子どもの生活の大半を占めるものは遊びであり,遊びによって社会生活を学び,自然に対する目を開き,創造性を伸ばすなど遊びを通して成長するものである。したがって,作ることに熱中し,しかも自分で作ったもので遊ぶという活動は,子どもの生活をそのまま授業の中に取り入れることになりその効果は大きい。そこで,「動くおもちゃ」を教材例として,作って遊ぶ活動を通した低学年理科の展開について考察を加えてみたいと思う。

 

2 作って遊ぶ活動の意義

 子どもはものを作るのが好きであり,自分で作ったりそれで遊んだりすることに熱中する。例えば,「動くおもちゃ」では,それを作って遊ぶ楽しさを通して,もっと速く動かしてみたい,もっと遠くまで飛ばしてみたいなどの欲求が生まれ,そこから創意工夫をはたらかせ,それによって科学的な見方や考え方,処理のしかたを身につけていくようになる。

 低学年の段階では,探究過程を重視した問題解決学習には無理があり,直接経験を通して試行錯誤をくり返しながら問題を解決していくのが一般的な傾向である。おもちゃを作って遊ぶ活動では,作ったりそれを使って遊んだりしているうちに,思うように動かないなどの問題を持つようになり,それを解決するために,動きをよく観察したり作りかえたりする。その過程の中で,動くしくみや特徴がわかるようになり,また創造性も高まってくるといえる。このように,低学年の児童においては,製作活動やそれを用いた遊びの活動そのものが問題解決学習といえる。

 児童の製作は,一般に教師の作品などを見て,それをまねて作ることから入る。低学年の子どもにとって,はじめから創作することは無理な場合が多い。したがって,模倣製作は子どもにとって


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