研究紀要第35号 学習指導に関する研究 - 011/066page
「血液とその循環」に関する実験
−ヒヨコを実験教材として−
平 山 宏
(科学技術教育部)1 はじめに
血液は,体内でいろいろな物質を運ぶのに重要な役割をしている。小腸から吸収した養分や,肺から取り入れた酸素をからだ中の組織に運び,養分が分解して生じた二酸化炭素を肺へ,不用物を腎臓などの排出器へと運ぶ。そのほか,からだの各部のはたらきを調節するホルモンを運搬したり筋肉や腎臓で発生した熱を全身に送って体内の温度を平均化する役目をもっている。このほか,体内に侵入した病原菌を捕食したり,無害にするような抗体をつくって免疫のはたらきをもつ。
このようなはたらきをもつ血液が絶え間なく体内を循環して動物の生命が維持されている。
そこで「血液とその循環」に関連する項目を,新しい学習指導要領から拾い出してみると,下記のようになっている。
小学校第6学年 A 生物とその環境 (3) 人の呼吸・消化などを調べ,体のおよそのつくりやはたらきを理解させる。
オ.血液は,心臓のはたらきで体内を巡り,養分,酸素,二酸化炭素などを運んでいること。
中学校 第2分野 (3) 生物の体の仕組み
イ.多細胞生物の体の仕組み
(イ)生物の体には,細胞に必要な物質や不用な物質を輸送するつくりが発達しているものがあり,高等動物では,血液やその循環が重要なはたらきをしていること。
高等学校 生物 (2) 生体とエネルギー
ア.物質交代とエネルギー交代
生体内の化学反応と酵素,同化,異化
(3) 恒常性と調節
イ.個体の恒常性と調節
恒常性の維持,神経系とホルモン
なお,新しい学習指導要領の理科の目標には,「観察,実験などを通して」と,理科の学習活動は,自然の事物・現象について直接経験を通して展開しなければならないことをうたっている。また,生物の学習においては,生物と環境とのかかわりあい,生物体の仕組みやはたらきの精妙さを知ることによって,生物現象の理解を深め,生命を尊重する態度を育成することをねらいとしている。ところがわれわれの身近かに,教材としての生物がだんだん少なくなってきて,生きた教材を用いた理科の学習が減少してきた。このような現状から,何をどのように教材化していったらよいか,それと生物教材の確保が重要な課題となろう。
そこで,今回はヒヨコを実験教材として,生かしたままで行える「血液とその循環」に関する実験を取り上げ,授業などで手軽に実施できる内容のものを二,三紹介したい。