研究紀要第35号 学習指導に関する研究 - 018/066page

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から12mmのところまで下がり,特に1,2では,管の底に直径2mmくらいの真紅色をした沈殿が見られる。3〜7までは管の底に淡赤色の沈殿が見える。8は,わずかに赤血球の沈降が認められるが,前述の透明層と不透明層の境界ははっきりしていない。9,10は,全体が透明な淡赤色である。

 それから,遠心分離機(1,500回/分で2分間)かけて,溶血の状態を観察したところ,7にわずかに着色が認められ,9にごくわずか赤血球の沈殿力確認された。以上の測定結果をまとめると,図−10のように図示することができる。

図−9 ヒヨコの血液での測定結果
図−9 ヒヨコの血液での測定結果

 それによると,0.4%食塩水溶液においてはじめて一部溶血現象が認められ,0.25%食塩水溶液で溶血が完全に行われている。したがって,この場合は,弱い赤血球がまず破壊して溶血をはじめる0.4%食塩水溶液の濃度が最小抵抗値であり,最も抵抗の強い赤血球もほとんど全部破壊されてしまう0.25%食塩水溶液の濃度が最大抵抗値となる。その0.4%から0.25%までの間がヒヨコの抵抗値というわけである。この抵抗値は動物の生理条件で変化するといわれている。

 

6 おわりに

 動物生理の「物質交代とエネルギー交代」で重要な役割を果している「血液とその循環」に関する実験の中から,実験教材として用いるヒヨコを殺さずに実施可能な,血流の観察,血球の観察,血球数の測定,溶血現象の実験等の実験方法について紹介してきた。

 いずれも小・中・高校と児童・生徒の発達段階に応じて,授業などで手軽に実施できるものであるから,大いに活用していただきたい。
 従来,これらの実験には,メダカやカエルなどの動物教材が用いられてきたが,近年,都市ではメダカやカエルなどの動物教材が少なくなって,入手しにくくなり,実験が困難になってきた。

 こうした状況だからこそ,生命をもつものに触れ,観察・実験などを通して得られる興味や感動は,他教科で得ることのできないすばらしいものである。したがって,都市近郊にある種鶏場(卵用鶏ふ化場)から,季節に関係なくいつでも安価に購入できる雌雄鑑別済みの雄の
ヒヨコを飼育して,これからもいろいろな実験を試みていきたい。

   参考文献

 小学校指導書理科編 S53文部省
 中学校指導書理科編 S53文部省
 高等学校学習指導要領S53文部省
 動物生理学,生物実験講座3
               田中英彦著
 先生と生徒のための生物実験  科学の実験編集
 生物デモ実験の進め方U    科学の実験編集
 理科実験図解大事典 生物実験編 岡田要監修
 動物の解剖               入来重盛著
 体液生理実験法 生物実験法講座 (8上)
                        中山書店


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