研究紀要第35号 学習指導に関する研究 - 017/066page
むので神経が疲れる。また,操作が微妙なため,ちょっとした加減で,結果にバラツキが生じ数的に大きな開きが出てしまう。数多くこなして習熟する必要があり,つねに同じ調子で実施しなければならない。特に,顕微鏡の視野に入る計算室内の赤血球は均一に分布されていて,16中区画の算出値の開きが20を越えない場合にのみ,数値を測定すべきである。
白血球の場合,チュルク氏液と混和することによって,赤血球は溶解し,白血球の核だけ紫色に染まるので白血球数を測定できるわけであるが,ヒヨコでは,前述のように赤血球に核があるために,チュルク液により赤血球は溶解しても,核だけは紫色に染まって残るので,白血球の核と区別がつかず,白血球数は算定できなかった。
したがって,白血球の計算は赤血球に核がないほ乳類(ヒト,ウサギなど)は教材として可能であるが,カエルやヒヨコでは核があるので不可能と考えられる。
表−4でもわかるように,中区画内に入る赤血球の数は同じではなくて,数多く処理すれば,ある値を中心にそれより少ないものと多いものとが見られ,統計的処理の学習もできるので有意義ではないかと思われる。
5 溶血現象の実験
溶血現象とは,赤血球のもつ浸透圧が,食塩水溶液のもつ浸透圧.よりもある程度以上大きくなると,赤血球自身の膨圧によって原形質膜が破れ,原形質吐出をおこすことをいう。
生理的食塩水は,赤血球とほぼ等しい浸透圧をもつので,この中では赤血球は破壊されない。1 準備
ヒヨコ
小試験管(10本)試験管立て,駒込ピペット(5ml用)採血用注射筒(1ml用)電動式遠心分離機
1%食塩水溶液,蒸留水,凝固防止剤(市販アンプル入)2 方法
(1) 試験管立てに10本の試験管を並べ1〜10の番号をつける。
(2) 1の試験管から順に0.7%,0.65%,0.6%…0.3%,0.25%の等差の濃度の食塩水溶液をそれぞれ3mlずつ入れる。
(3) 注射筒に凝血防止剤(市販アンプル入)を予め0.05ml入れておく。
(4) 前述の方法で出血させたところに,注射針をはずした注射筒をあて,0.2mlの目盛まで採血する。
(5) 注射筒をよく振とうさせて,血液と凝血防止剤を混合したのち,注射針を取りつけて,前記の1〜10の試験管の食塩水溶液中に1滴ずつ落す。
(6) 各試験管をよく振とうして,1時間以上室温に放置して溶血の状態を見る。2時間放置しても溶血状態がわかりにくい時は遠心分離機を使って赤血球を沈殿させて見るとよい。
3 結果と考察
9と10は,試験管を振とう後,すぐに食塩水溶液が透明な淡赤色を呈し,溶血をおこしているのが見られる。
30分後,1から7までは,食塩水溶液の透明層が上面から3mmで,その下は赤血球の混じった不透明層になっていて境界がはっきりしているが,7では,全体がやや透明を呈している。1時間後,1から7までは,透明層は上面から6mmになり,わずかに,赤血球が沈降して試験管の底に沈んでいるのが認められる。
2時間後,1から7までは,透明層は上面