研究紀要第35号 学習指導に関する研究 - 029/066page

[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

放射線と物質の相互作用

小 荒 井  要   
(科学技術教育部)

1 はじめに

 ここ数年来,「原子構造」に係わる実験教材の研究は,ひとしお盛んである。
 当教育センターの高校理科講座・物理でも,ここ数年間に,たとえばクランクヘルツの実験,並びにその装置の製作,プランク定数の測定,NaI シンチレーターによるγ 線のエネルギー測定,ほか数点について取り上げてきている。

 そこで,今回は,理振法規格の放射線計数装置を使って放射線に関する実験が,どの程度まで教材化できるかを検討してみる。
 本誌では,そのうちのβ,γ 線と物質の相互作用の範ちゅうについて紹介する。

2 β 線と物質の相互作用

●β 粒子は,物質中を通過する際,電離や励起のためにエネルギーを失うわけであるが,物質1cmを走る間に失う平均のエネルギーは, ※1
   原子番号に比例し,そしてβ 粒子の運動エネルギーがあまり大きくない範囲では,およそ運動エネルギーの二乗に逆比例する。
●また,β 粒子はエネルギーが高くなると,原子核のクーロン場から力をうけて減速し,その加速度の二乗に比例する光子を放出する。※2
   いわゆる制動放射であるが,β 粒子の加速度は核電荷量,従って原子番号Zに比例するから,結局
   原子番号zの二乗に比例する割合で,制動放射が行われる。
     β 線と物質の相互作用
●次に,β 粒子の場合はα 粒子等の重粒子に比較すると質量はかなり小さいので,散乱の確率の大きいことが,一つの特徴となる。
 散乱角Qの二乗平均値は,β 粒子の運動童をp,速度をu,物質の厚さをt,その原子の原子番号をZとすると
     β 線と物質の相互作用
で示され
 β 粒子の運動量が小さい程,また物質の厚さ並びに,それの原子番号が大きい程,散乱の程度も大きくなる。

図1

 そして,Qが90°を越す場合,つまり後方散乱もβ 線の特徴であり,放射線計測の興味ある題材となり得る。

β 線と物質の相互作用

 ただし β = u/C,nは1p3中の原子数,I は原子のイオン化エネルギー,Z は原子番号,E は電子の運動エネルギー
※2 加速度a をうけたβ 粒子は2e2 a2 /3C2 の割合で光子を放出する。


[検索] [目次] [PDF] [前] [次]

掲載情報の著作権は福島県教育センターに帰属します。
福島県教育センターの許諾を受けて福島県教育委員会が加工・掲載しています。