研究紀要第35号 学習指導に関する研究 - 036/066page
●Fe,Aについても吸収曲線を描いてみた。
これから求めた半価層と吸収係数を次表に示す。
物質 原子番号 半価層 線型吸収係数 A 13 3.95cm 0.16cm−1 Fe 26 1.30 0.53 Pb 82 0.93 0.75●表から,原子番号の大きい物質ほど線型吸収係数は大きい値をとることがわかる。
●γ 線の吸収に関する実験は,霧箱用の線源・硫酸ウラニルを用いても成功する。
勿論,α,β 線を除去することが必要であるが,幸い,γ 線の吸収実験では面密度の大きい吸収板を用いるので特別の仕かけは必要としない。
私は,Pb は3mm単位の鉛板で,またFe,Ae はそれぞれ5mm,9mm単位の板を用いて好結果を得ている。
4 おわりに
放射能検知装置が理振法設備規準に指定されてから20年余を経ているのに,これの利用が定性実験の域を越えることが少なかったのは,適当な線源を入手できなかったこと,更に,装置が各校1基に制限されているということが,主な理由としてあげられる。
しかし,装置の基数が少ないことは止むを得ないとしても,線源は現在,比較的容易に入手でき,このため各種の実験が可能になった。
また,新しく購入するまでもなく,手持ちの線源を工夫することで,たとえば霧箱用の線源でも前述のように,「γ線の吸収に関する実験」や,また「逆二乗則の実験」も可能となる。生徒達のこの範ちゅうに対する興味関心も高いものがある。創意と工夫を凝らして,実験教材を活かせるような環境を整えることがのぞまれよう。
もちろん,一言に「原子構造に関する実験教材」といっても,扱い次第では間口も広く奥ゆきも深いものとなるから,時間上の制約,全体構造の中での位置づけ,また生徒の実態等を考えた上での教材の精選と構造化も,検討されるべきことはいうまでもない。
参考文献
・放射線測定 大野和郎ほか 朝倉書店
・放射線計測学 三浦功 ほか 裳華房
・ユールラウシュ 実験物理学 東京図書
・放射線実習の手引 日本原子文化振興財団