研究紀要第37号 登校拒否に関する研究 - 019/022page

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X 登校拒否をする子どもの母親の「エゴグラム」

1.はじめに

登校拒否発生のメカニズムを考えたとき,家族関係において,少なからず,なんらかの形で歪みが生じていることがよく問題にされる。それでは,登校拒否の子どもの家庭と,そうでない家庭の間では,何か異なった問題や特徴があるのであろうか。

まず,いえることは比較的恵まれた家庭環境にあり,外兄的には何の問題もみあたらず,親は教育熱心,経済力も豊かである場合がほとんどである,そして,興味があることは,ますます核家族化が進む中にあって,物心ともに安定した小規模の家庭に発生することが多いという事実があることである。しかも,このことは.大人と子ども,親と子どもの心理的距離があまりにも接近しすぎ,いわゆる大人の手の行き届いた,子どもへの密着度の高い家庭に多いといえることである。

そこで,両親の性格特性を問題にしなければならないが,今回は,両親のうち,特に母親の性格特性を「エゴグラム」によって分析し,明らかにすることとした。

2.エゴグラムとは

(1) エゴグラムとは,自分自身を知るための手がかりとなる一つの方法としての「交流分析」(Transactinal Analysis = 略称TA )中に出てくるものである,TAでは,次のような三つの分析が行われる。

 A 性格の構造を知る構造分析
 B 私たちの対人関係の様式を知る交流バターンの分析
 C 人生を一つのドラマとみなし,その中で自分がとる人生への基本的な構えと,自分が演ずる脚本の分析

エゴグラムは上記のAにあたり,自分自身の白我状態を五つに分け,それを数量化し,グラフに表す,試みである。

(2) 五つの自我状態

 @FP 父親的な自我状態;おいこら型
   誤ったことに対して,批判・しかり責める・処罰を行って,きびしくしつける心。
 AMP 母親的な自我状態;よしよし型
   周囲に対して,思いやりの気持ちをもち,人の苦しみをわがことのように感じとる心。
 BA 大人の自我状態;てきぱき型
   主体的に根性をもって生きようとする働きや,創造的な営みをつかさどる心。
 CFC 自由な子どもの自我状態;生き生き型
   本能的な欲求や感情のままに,子どものようにふるまおうとする心。
 DAC 順応した子どもの自我状態;おどおど型
   真の感情を押え,周囲に順応しようとする心。

3.調査目的

性格の形成は,体質と関係の深い気質とか,素質という生まれつきの基盤のうえに,環境や体験,または習慣などの影響でかたちづくられるもので,後天的なものであるといわれている。そこで,子どもの性格形成の過程で,両親,特に母親がどのようにかかわってきたかに焦点をあて,分析と考察を加えることによって,登校拒否の子どもに対する母親の態度を明らかにすることを目的とした。

4.調査対象

昭和53年4月から11月までの間に,登校拒否の主訴で来談した子どもの母親24名と,これと比較するための正常な子どもの母親63名を対象として選んだ。
   登校拒否群の母親 24名
   正常群の母親   63名

5.調査方法・調査様式

調査の方法は質問紙法をとり,五つの自我状態のそれぞれに10項目の質問文を作成し,解答を○(2点〉,△(1点),×(0点)として求め,それらの加算法により,各々の自我状態を0点から20点の範囲に点数化し,折れ線グラフで表した。その様式見本は表2のとおりである。


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