研究紀要第37号 登校拒否に関する研究 - 018/022page

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まえです。ぼくが悪いんですから,しかたがないと思っています」
T 「うん,そこまで気がつけばたいしたもんだ。そういえば,床屋に行って来たようだね」
S 「きのう,床屋に行って,頭をさっぱりして,ぼつ,ぼつ,勉強を始めようかと思いました」

この段階では,自己洞察の深まりが十分感じとられるようになり,また,進んで話しをしてくるようになってきた。このようになってくれば,最後の強化・保障によって,耐性をより強化することが可能となってくる。

●12/14 担任教師より電話連絡あり,「S男は,12/1より毎日登校し,期末試験も全科目受験した。表情も明るくなってきている」とのことであった。
●12/24 夕方,本人より電話あり,「最初は非常に心配したが,期末誠験を受けてみてから,自分の考えがあまかったことがわかった。これからは心をいれかえてがんばります。どうも,ありがとうございました」と明るく,希望に満ちた声で話してくれた。

7.考 察

(1) 指導方針(1)ついて

来所当初は,学校の延長のような態度で,なかなかラポートをとるのに苦労したが,S男が,受容されていると感じとってくれたときから,抵抗なくカウンセリングを続けることができた。しかもS男は,自分から来所の日時を決め,夏季休業中も中断しないで来所した。
このことから,カウンセリングにおいては,何よりも,本人とのラポートづくりが大切であることを感じた。

(2) 指導方針(2)について

S男には,来所当初から自律訓練の簡便法を指導してきた。S男は,「毎回指示された通り努力したら,気分が落ち着き,注意集中ができるようになりました。」といっている。
このことから,S男のように,神経症的傾向の強い登校拒否児には,自律訓練法は大変有効であると思われた。

(3) 指導方針(3)について

初回のカウンセリングで,父親に登校刺激を加えないよう指導したが,その結果,「父親が学校に行け,行けと言わなくなったので,気分が落ち著いた。」とS男は言っている。
このことは神経症的傾向の登校拒否に親がどう対処すればよいかの一例となるものである。

従って,本人のカウンセリングと平行して,初期の段階においては,親の養育態度の改善についてのカウンセリングをする必要がある。
また,学校側と密接な連絡をとることも大切なことである。特に高等学校の場合は,授業時数とか,授業日数とかの不足によって,留年になるおそれがある。

このことから,登校拒否児は学習に対する意欲を失い,センターにも来所しなくなるので,いつでも登校できるようにしておくことが大切である。S男の場合は第2学期は一週間に一度ずつ登校し,2時限授業をうけ,不安感の除去に努めたことは大変賢明な処置であったと思われる。それに加えて,学校側が,担任教師を始め,全職員が一致協力して,S男を温かく見守り,接してくれたことも成功した要因と思われる。

8.まとめに

(1) 登校拒否はケースによって,指導方法が変わり,教師とのかかわり方によって左右される。適切な指導方針のもとにおける,教師と生徒の心のふれあいがより大切である。

(2) 無気力傾向がみられる場合,初回の面接における話し合いのきっかけをとらえるタイミングと,面接者のより受容的な態度こそ治療の成否の重要な鍵となる。

(3) 今後,高校生の登校拒否が増えることが予想されるので,早期発見・早期治療の必要性を痛感する。と同時に一歩進めて,予防的な方向で,生徒に相対していかなければならない。
つまり,高校生活を通して,「真に生きるとはどういうことなのか」をある程度,教師側より方向づけられた時,現在,自分がおかれている立場,勉学の意義等がうまく生徒に受けとめられるのではないかと考える。


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