研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 013/081page

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高等学校生徒の学習意欲を高めるための暗示効果の一考察
 
山 崎 一 雄
(教育相談部)

1.はじめに

 近ごろ,高等学校の生徒で,「どうも,授業がよくわからないので,授業についていけない。」といって,相談に来所する者がいる。こんな生徒に,知能検査を実施すると,結果は正常の範囲におさまっている。とすれば,この生徒は,わかろうと努力し,なまけているわけでもないことがうかがえる。
 このような生徒を,簡単に「学習意欲がないからだ。」と,きめつけてよいだろうか。
 そもそも,「意欲」は,興味もしくは必要感,ないしは両者に迫られた時に,強力にわいてくるものである。

 学校において,教科学習に全く意欲をもやさない生徒でも,放課後の部活動に熱心であったりする場合が見られるが,教科学習は,部活動などとちがい,必ずしも,生徒の興味・必要感のみに基づいて行われているものではない。そこで,学習意欲の問題を考える場合,表面的な現象に視点をあてるのでなく,内面的な堀りさげが必要になってくる。すなわち,学習意欲の背景になっている種々の事柄を総合的に考察し,対策を考えなければならないと考える。

本研究は,学習意欲について,心理学的見地から考察を加えるとともに,それを応用し,わかる授業の設計をこころみたものである。この研究のなかから,生徒側の「おちこぼれ」が問題として問われていると,短絡的に考えずに,教師側による「落ちこぼし」もあることを考えていただければ幸いである。

2.学習意欲とは

 国語的な解釈として,学習意欲を広辞苑で調べてみると,「学習に対して積極的に何かをしようとする気持ち」,「種々の動機の中から,ひとつを選択して,これを目標とする能動的意志活動」と出ている。
 また,教育学大事典によれば,「学習活動を喚起し,持続させ,方向づけ,強化する機能の背後に想定される行動傾向を意味する」と出ている。
さらに,心理学的見地から,教育心理学小辞典で調べてみると,「学習者自身が意志的・自発的に学習活動を求めようとする働き」と出ている。

 以上のことから,共通していえることは,自らの力で積極的に事態に立ち向かい,真剣に問題に取り組む時に起こるものであるということである。
従って,学習意欲を,「学習しようとする動機(欲求)を選択し,それを実現しようとする心の働き」とおさえたい。

 この学習意欲を向上させるためには,教師の教育的配慮と,創意が発揮されなければならないと考える。教師は,生徒の自発性・必要感・経験などを重視しながら,そのうえに,適正な動機づけによって,一段高い概念を学習させ,更に,一度確立された概念を新しい基礎として,より高次な概念へと導いていくという,スパイラル方式が,生徒に対して,一歩一歩の高まりを自覚させ,もっと学びたい,やりたいという気持ちに発展させていくものである。

3.学習意欲欠如の原因

 教師は,授業に臨む場合,当然のことながら,


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