研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 033/081page
空中写真の教材化 −報告1− 〜地形・地質構造の判続〜 入 道 正 (科学技術教育部)1.はじめに
1961年,ガガーリン大佐を乗せたソ連の人工衛星の打ち上げ以来,人類の宇宙探査分野は大きく前進した。
当初は,軍事的色彩も強かったが,次第に平和目的の人工衛星も数多く打ち上げられ,現在は常に千を越える大小の衛星が公転をつづけている。これらの人工衛星はそれぞれ目的をもっており,身近かな衛星として,日本が打ち上げた「ひまわり」は,テレビを通して茶の間に雲写真を送り届けて親しまれている。
テレビに写る雲写真は,天気図の見方のよくわからない人達でも,図1のようなすじ雲のでている写真を見れば,日本海側には雪が降るぞと判読できる。今日では,雲写真は天気予報には欠かせない要素となっている。
図1 雲写真
ふり返って,理科における気象教材の取扱いを見ると,一方では,宇宙開発の恩恵が茶の間のテレビに送り込まれ,わかり易い天気予報として視聴者に定着しているにもかかわらず,教室内では,天気図を中心に大気の運動についての学習が展開されている。気象の学習にあたり,記号化された天気図を学ぶ前に,より具体的な雲写真から学習に入り,次のステップとして,雲の位置から天気図へと学習を進めるプロセスがより自然であり,よりわかり易い理科指導となるだろう。この,気象学習と同じことが,“地殻の変動”の地形学習でも言いうる。地形図から段丘地形や扇状地形を探させる学習方法は,社会科でも行なっている。この地形図を用いての学習は,等高線の模様から地形を解読する能力は高められても,野外に立って,これが段丘地形,あれは扇状地と,はたしてわかるだろうか。
地形や地質構造等の学習には野外観察が大切である。高台から地形を観察すると一目瞭然,段丘,扇状地,断層崖等,はっきりと理解できる。
図2 擢上川の段丘
しかし,常に学校周辺に,教材化できる地形が存在するとは限らない。
これらの地形学習を,側面より助ける方法として,実体視用空中写真や,陸上探査衛星の空中写真の利用がある。実体視用空中写真は,段丘のような小さい地形学習に有効であり,衛星の空中写真は,日本列島や県土のように広い地域を対象に,地質構造に伴なう大きな地形を学習するのに役だつ。最近ようやく,中学校の教科書に空中写真が取り入れられ始めた。地形や地質構造等の学習に,まず,立体的な地形を観察させ,その地形的特徴から,地形要素や地質構造を考察させる学習のプロセスを大切にしたい。
2.陸上探査衛星"LANDSAT"画像の教材化にあたって
人口衛星画像は,地形図や地形模型とちがって,