研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 050/081page
(3) 民謡の特性
民謡には次の五つの特性が考えられる。民謡の指導に当っても,この特性を十分考慮しなければならない。
@ 自然性〜民謡の発生からして自然発生的な歌謡である。
A 伝承性〜民謡は,原則として文字や楽譜のない世界の所産であり,直接,口から耳へ,耳から口ヘと伝承されたものである。
B 社会性(集団性)〜純粋の民謡の大部分が作業歌であるように,民謡は各個人の特殊な生活感情ではなく,集団的に創造された民衆の詩であり,音楽である。
C 素朴性〜素朴性こそ民謡の本質であり,最大の魅力である。マスコミの発達は民謡の歌い方にも変革をもたらし,素朴性や郷土性が失われてきている。
D 郷土性〜土地の匂い,郷土色をもっている。民謡は,常に郷土の人々の好尚(こうしょう)に適したリズムと旋律をもっている。
(4) 民謡のリズムと特徴
拍節的なリズム(八木節様式) 拍節的でないリズム(追分様式)○ 拍節,リズムが明確である。
○ 2拍子,4拍子の2拍子系がほとんどである。○ 比較的メリスマ的でない。
○ 音域は一般に狭く,誰でも歌える範囲内にとどまる。
○ 集団で歌われるものが多い。
○ ことばを大切に歌われる。(語りもの的)
○ 伴奏楽器としては,太鼓や三昧線が適する○ 拍節がはっきりしない。
○ 2拍子系ではあるが不明確で,歌い手の気持や声の調子などによって,即興的に自由に歌われる要素が強い。
○ 比較的メリスマ的である。
○ 音域は一般に広い。○ 単独で歌われるものが多い。
○ 旋律を大切に歌われる。(歌いもの的)
○ 伴奏楽器としては,尺八が適する。本県の民謡には,拍節の明確な八木節様式に属するものが多いが,「相馬の馬方節」,「白河の馬喰節」,「会津の馬子歌」や木挽歌(相馬・いわき・県北)などの民謡には,拍節がはっきりとれない追分様式の要素をもっている。