研究紀要第38号 学習指導に関する研究 - 051/081page
(5) 民謡の音組織
民謡の音組織を陽音階や陰音階で分類することには,多少無理があり,小泉文夫の提唱するテトラコルドを基本とした合理的な分類法を取り入れると,大変理解しやすくなる。ただし,中学生に旋律論・音階論を機械的に教え込むことは絶対に避けるべきである。
「日本の音楽」の音階は,1オクターブを単位とすれば,基本的に5音音階である。しかし,民謡の旋律には1オクターブよりも音域の狭い旋律や,音域としては1オクターブより広いが,1オクターブを旋律の動きの基礎にしていない旋律もかなり多い。そのうち音域が3度以内の狭い音域の旋律の中心になる音(核音)は一つしかないが,音域が完全4度以上ある旋律では,完全4度のわくを中心に旋律が動いており,そのわくの両端の音が音程もしっかりしているのが普通である。
また,1オクターブが旋律の動きの基礎になっている旋律でも,注意してみると,やはり1オクターブの中に完全4度のわくがあり,それを基礎に音が動いていることがわかる。
つまり,わらべうたや民謡をはじめとして,伝統音楽の旋律は,完全4度の音のわくを基礎に動いているが,これをテトラコルド(Tetrachord)といい,その両端の音のように,旋律の動きの中心になる音程のしっかりした音を核音という。
終止音もいづれかの核音で終るのが普通である。
日本の旋律では,この両端の核音の間に,中間音が一つしかないのが普通で,その位置によって4種のテトラコルドができる。わらべうたや民謡などは,譜例3aの民謡のテトラコルドが最も多く現われている。本県の民謡の約70%は,民謡のテトラコルドでできているが,他は,都節のテトラコルド(「いわきの矢送り歌」,「会津磐梯山」など),律のテトラコルド(「鵯巣の早乙女踊り歌」,「本郷甚句」など)や,異種のテトラコルドの結合でできているものがある。また,異種のテトラコルドヘ転調している曲もある。(「原釜大漁歌い込み」,「相馬麦つき歌」など)
4 民謡の教材化
教材とは,学習指導の材料となるべき教育的な価値材であり,その教材によって学習の目標を達