研究紀要第39号 授業研究と評価 2-1-2方式の授業研究 - 017/038page
7.事後研究会の記録
昭和54年10月9日(火)午後3時30分〜4時45分
場所 福島四小
出席者23名(福島四小,福島大附属小,教育センター)(1) 授業者の自評
歴史学習において,児童の歴史的認識を深めるには,@直観的認識,A事実認識,B関係(本質的)認識の3段階をふまえていくことが大切ではないかと考えて,本日の授業を行いました。
@では,授業の導入段階で子どもたちが資料に敏感に反応して,疑問や矛盾,驚きを感じて,強い問題意識を持ち,一人一人が「そのことを早く調べたい」という気持ちになることが大切で,それを願って2枚のスライドを選択し,提示しました。
Aでは,子どもたちが課題解決のために必要な歴史的事実を数多く発見していくことが大事だと考えます。時間的余裕があれば,各自がここで調べる活動を行うのが望ましいのですが,課題解決に迫る資料が子どもの身近なところにないことを考慮して,本時は,教師が準備した資料で追究活動を行いました。
Bでは,自分たちがとらえた歴史的事実を関係づけたり意味づけたりできるようになることが大切だと考えています。「文明開化」を既習の「富国強兵」など明治の諸改革と関係づけてとらえさせることを本時ではねらいました。
授業をふり返ると,課題は握では,2枚のスライドを見た子どもたちが願いどおりの姿を見せて学習意欲を高め,課題を明確にとらえることができたのではないかと思います。しかし,次の追究の段階では,かなりの時間がかかってしまい,事実認識に力点がおかれてしまう結果になったのではないかと反省しています。ただ,ここでは子どもたちの興昧・関心を考えた資料を用意して,「文明開化」について今までよく知らなかった事実を多くとらえさせる努力をして次の段階へ進むことを考えて授業をしました。
最後の整理の段階(関係認識)で時間が足りなくなって苦労しましたが,授業後の子どもたちのノートを見ますと,授業前にわたしたちがねらった関係認識まで深まっていると思われる児童は23名,事実認識段階でとどまっている者は12名,新たに調べる問題を見つけだしている者が2名でした。
(後 述)
(2) 課題は握(直観的認識)について
司会 自評にもありましたが,本日の授業研究の焦点は,児童の歴史的認識の深まりを,直観,事実,関係の三つの段階で見ていくことにあるので話し合いもそこに焦点づけていきたいと思います。
まず,課題は握の段階では,児童の直観的認識が大切にされているわけですが,授業者の意図はどのように具現されていましたか。観察の先生は。
A 資料1,2が映写されると全ての児童の視線がスクリーンに集中し,「ずい分変わってる」などというつぶやきが聞かれました。時間的にも,内容的にも計画通りだったと思います。
B 上,中,下位の抽出児とも目を輝かし,資料に食いつき,学習意欲の盛上がりがあったように見受けました。
高村 子どもたちの問題意識をまとめてねり上げる時間的余裕はなかったが,スライドを見た子どもたちの「え!そんなに変わったの」「いつごろ」「そのほかのことはどうなったの」というような問題意識に根ざした課題のとらえさせ方ができたのではないかと思います。(省 略)
S 授業案でも,資料1・2を長時間見せないとありますが,スライド2枚を対比しながら提示して,時代の違いなどを直観的に気づかせようという意図は達成されたとみてよいと思います。
H この段階で,あのように生き生きした表情が見られるようにするのは,資料の適切な選択や提示の方法が大切であることがわかりました。
A チェックポイント1・2について話し合っているわけですが,このように,授業案の中に観察の観点があり,具体的な視点が明確に表示されていたので授業者の意図がわかり,観察するとき何を見て何をとらえればよいかわかって,とても良かったと思います。(省 略)