研究紀要第39号 授業研究と評価 2-1-2方式の授業研究 - 018/038page
(3〉 課題の追究(事実認識)
司会 よく選びぬかれた2枚のスライドの効果的な提示によって,子どもたちが課題を確実にとらえて追究の段階に入りましたが,ここでは,子どもたちの「事実認識」を大切にしていこうという意図があります。チェックポイントは,3です。
C この段階は,予定よりかなり時間がかかってしまったようですが,資料の提示(資料1・2・3)がすばらしく,明治時代になって何が変わったかを,資料を比較しながら盛んにメモしていました。メモを見ると,内容もしっかりしていて,一人一人が変化した事実をよくとらえていたといえます。(省 略)
D 抽出児D(下位)は,資料をよく見てメモをとっていた(人力車,洋服など)。友だちの発表もよく聞き,自分のまちがいに気づくと,ノートを修正していました。
O 抽出児S(中位)は,レンガ造りなどをメモしていて,先生の補充資料(絵〉には驚きの表情をはっきり見せていました。「郵便」の話には笑いを見せて,とても楽しそうに学習し,少しも飽きた様子は見られませんでした。(省 略)
高村 計画より時間がかかっていることはわかっていましたが,一人一人に多くの事実をとらえさせないと,つまり,文明開化が生活全般に及んでいることをとらえさせないと次の関係認識に進めないという気持ちがあったので,子どもたちが提示された資料を見て調べる活動を大切にしました。今,反省すると太陽暦などはおさえなくてもよかったのかなと思ったりします。ここでどういう事実のおさえ方をすべきなのか考える必要を感じます。
A 確かに資料が豊富に用意されていて児童の興味,追究意欲をそこなわせないで,じっくり調べさせることができたと思いますが,児童がとらえた事実の整理のしかたをどうするか,「衣食住」「交通」の整理のしかたをもう少し短時間で行う方法はなかったのでしょうか。
高村 いろいろな方法があると思いますが,短時間でやらせようとすると,結局教師サイドの進め方になりがちなので,子どもの考えや学び方を育てる,生かす方向でやろうとしたための時間がかかってしまったように思います。
(省 略)
司会 子どもたちの活動を大切にして「文明開化」の事実をじっくり調べさせた後,その「文明開化」は,どのように進んでいったかという問題,つまり「事実を補う」追究に入りましたが,ここではあの「福島の写真」は,すごく大切な意味を持っていましたね。チェックポイントは,4・5・6・7・8・9です。
C 資料のすばらしさ,提示のしかたの適切さもあって真剣でした。東京と福島の比較であの写真を見て,どの子も驚きの表情を見せ,福島は「おくれてる!」とつぶやいた子もいました。
O 子どもたちが新しい事実をとらえるためには資料が適切でなければならないと思いました。ヨーロッパの写真は,「文明開化」が西洋文化を多く採り入れたものであること,TPの等尺度年表は「文明開化」が東京中心で,地方まではそれほど波及しなかったことをとらえさせるのに非常に効果的であったと思います。
D 抽出児O(下位)の子が,この段階でやや勉強したくないような態度を見せ始めました。現在使われているものについての発問に対して挙手したが,指名されなかったのでおとなしくなってしまった。福島の写真には驚きの表情を見せ,「もう終わりかな」とつぶやいていました。
B ここでの効果的な資料の提示の問題は,子どもたち自身にどう事実認識を広め,深めさせていくかという問題とかかわりがあると思います。教科書や資料集などを生かした子ども自身の追究活動をもう少し大切にしていくと,さらに主体的な取り組みが望めたのではないでしょうか。この問題は,関係認識のさせ方ともかかわりますが。
高村 その辺は大変むずかしい問題で,子どもたちの持ち合わせの資料でやれるものとやれないものがあります。「文明開化」そのものについては,確かに子ども自身に調べさせられると思いますが,