研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 000_02/025page

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ま  え  が  き

 教育相談は、教育機能のひとつとして、特に、個々の子供の全人格の形成と深いかかわり合いをもち、子供の全体を多方面からは握し、教育に関することを中心とした、健全性の保持と、不健康状態の改善をねらいとしているといわれている。

 ところで、教育相談は理念ではなく、ひとつの具体的な働き、あるいは行為、実践である。しかも、生きた子供を対象とし、子供の全体としての存在にかかわり合いをもつ働きである。だから、その働きは、すべて、子供の未来に対する責任をもつことになる。誤った処置は、修正できるものではない。

 この意味において、教育相談を行う側に、その責任に耐え得るだけの資質や能力、その他の条件の整備が要請される。このためには、多くの教師が、教育相談に関心をもち、できるだけ高度の技能を習得して、教育相談に関与することが望ましいわけである。しかし、このことは、特定のテクニックに熟達することを意昧するものではない。むしろ、子供の能力を可能な限り伸ばそうとする教育理念を確立することと、事実に忠実で独断に陥らない知性を堅持することが、基本的に重要であろう。

 以上のような意味あいから、教育相談についての基本的な考え方について、概説するとともに、いくつかの事例を通して、問題点の解明を図り、その底に流れている教育相談のあるべき姿を求めたものが、本報告書である。

 昭和55年3月

福島県教育センター所長  佐 藤 信 久


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