研究紀要40号 事例を通した教育相談のすすめ方 - 001/025page
1 教育相談とは何か
(1) 相談とカウンセリング
国語の辞書で「相談」を調べると、「(何かを決めるために)話し合うこと」とある。
一方、カウンセリング(Couseling)という言葉は、ラテン語のCounsiliumに由来し、その意味は、「共に考慮する、共に考える、相談する」ということである。現在の用法でも、カウンセル(Counse1)はコンサルテーション(Consultation)と同義で、「助言を求めること、あるいは助言すること」の意味に用いられる。
これらを一応まとめて、一口に言えば、「カウンセリングとは、助言を求めている人に対して助言を与えること」ということができよう。(2) 教育相談
学校教育の中では、教育相談(Educational Counseling)という言葉が登場してくる。この教育相談といわれるものは、基本的には、教育に関連して話し合いが行われ、助言を求める者に対して、助言を与える働きである。
しかし、これではあまりにもばく然としているので、平凡社の心理学事典で調べてみると、
「教育相談とは、個々の子供の教育上の諸問題に関して、本人またはその親・教師などに対して、心理学的・社会学的・医学的基礎に基づく相談を行うこと。広義の用法では、教育関係の諸問題についてのあらゆる相談を意味することであり、従って、教師が、学級や学校の経営上の諸問題、教育研究法などに関する情報・意見の提供を求める相談をも、その一部として含めることがある。」と出ている。すなわち、教育相談は英語の表現でも明らかなように、教育のことに関連したカウンセリングといってよい。
普通、教育を意図的に実施している機関は学校であり、そのための教育相談は、保育所・幼稚園をはじめとして、小学校から大学にいたるまでの教育場面を中心としながら、家庭と地域社会を含めた一切の問題を含むことになる。このように考えてくると、教育相談の領域は広義の立場をとらなければならなくなってくるが、反面、カウンセリングについて考えてみると、次のような特質が考えられる。
@ 普通、一対一の面接で行われ、助力を与える側のカウンセラー(相談者)と、助力を受ける側のクライエント(来談者)のふたりの間の人間関係が基本になる。
A カウンセリングの助力の手段は、クライエントの態度や表情などを大切にしながら、言語活動中心のコミュニケーションによる。
B 両者の助力を求めたり、与えたりするコミュニケーションは、相互的で、その心理的場の接触は極めてダイナミックである。
C カウンセラーは、できるだけ説得や強制・指示は行わず、クライエントが、問題を自主的に解決し、自己指導(自己洞察)ができるようにしてやる。
D カウンセリングの直接の目的は、当面する問題の解決であっても、そのような経験をとおして、人格の成長・変容を期することが終局的に期待される。
E カウンセリングは専門家による助力である。以上のような、カウンセリングの特質からみて、教育相談の領域を狭義に限定し、
「個々の子供の教育上の諸問題に関して、心理学的・社会学的・医学的な理解に基づいて、言語的手段を中心としながら助力していく働きである」とおさえたい。
2 学校における教育相談
学校における教育相談は生徒指導の一環として行うべきものである。
教育センター・児童相談所、あるいは精神衛生センターなどの専門機関での教育相談は、どちらかというと、対象者は心理的な障害を持っている者が多い。これに対し、学校では、心理的には、一応普通か軽度と考えられる子供を対象としている。それを図表化したものが図1である。
そこで目指するものは、次のようなものである。○ 暖かい人間関係の確立
○ 自己理解への援助