研究紀要第42号 教育相談における心理検査の活用 - 000_02/029page

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ま   え   が   き

 学校で行う教育相談は,専門機関の行う相談とは根本的に異なり,教師が行っている教育の働きの一部であり,常に教育に密着していなければならないものである。現在,学校においては,児童生徒の能力・適性に応じた教育の展開,児童生徒の本質的な理解に基づいた生徒指導の充実という見地から,画一的な指導を避けるように努めてきていることは喜ばしい。

 たしかに,児童生徒の一人一人は,素質,生育歴,環境,将来の進路などを異にしているし,それぞれの感情・感じ方・考え方なども異なっているものであり,同じ人間でも,その日その時の状況によって,願望,不満,不安など,常に変化し続け,固定化されていないものである。
 このことは,「人間は自らの力で成長する力を持っている」ということが,根底にあることである。

 間違った方向に進んでしまったのを,正常にかえす指導よりも,むしろ,成長力を阻害するような条件が起こらないような教育的な栄養が事前に十分に与えられる指導に,おもきをおかなければならない。

 真に児童生徒を理解するために,児童生徒の個々人に,どのような教育的栄養を与えれば,不適応行動から解放されるかに着目する必要がある。そのためには,どのような検査・調査を必要とするか,実施後におけるデータの処理と活用をどうするのかなどを考えてみたい。
 以上のような意味あいから,いくつかの事例をもとにしながら,基本的な検査とその活用のあり方を紹介し,問題点の解明を図ったのが,本報告書である。

 なお,本研究が,多少なりとも,今後の教育相談活動の向上のために,役立つことを願うとともに,日々の教育実践の中で,十分に御活用いただいたうえで,きたんのない御批判をお願いする次第である。

 昭和56年3月

福島県教育センター所長 佐 藤 信 久


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