研究紀要43号 学校経営改善に関する研究 学校経営評価に関する研究U (第2・3年次) - 012/049page
4 評価試案の特色
学校経営評価の基盤となる「評価の基本的事項」に基づき,評価の領域,評価の要素が設定されたあとは,評価観点の設定作業に入る。評価要素が抽出されているので,その基準性は保たれているわけであるが,その上なお,現場で活用される際にわかりやすく具体的な表現になっていなければならないという点に留意して表記した。
評価要素をもとに評価観点の基準となる中核的な事項をおさえ,それに付随する条件等を加味しながら,特に,動態的な評価が可能となるような表現を図ろうとつとめた。原案としての評価試案を協力校で実施してもらい,わかりにくい表現等に修正を加えるなどしてまとめたのが,巻末に付けた「学校経営評価票」(試案)である。その具体的な経過の説明は割愛することとし,評価票の中心的な役割を果たす重要な内容といえる評価観点の内容を含めた当評価試案の特色について説明する。
学校経営現代化への視線が,学校の教育的機能の充実と動態的な経営観の確立に向けられることは当然のことなので,当評価試案においても,この二つの観点から吟味検討したのであるが,教育的機能への配慮については,評価の要素設定の項でもふれているので省き,特に,動態的な評価のあり方と評価票の望ましい活用の仕方の二つの面から,当試案の特色をさぐってみたい。
(1) 動態的な評価
@ 経営過程の重視
評価領域を部分的に個々にとらえて評価するだけでなく,P−D−Sの経営過程の中に位置づけて経営の実態をとらえ,次年度の経営改善の資料に生かせるように配慮した。
評価領域ごとにP−D−Sの分類をし,それぞれ二項目の評価観点により,評価領域の経営過程及び系列全体の経営過程の実態が把握できるように配慮した。P−D−Sの経営過程がP−D−S−Pへと循環的につながりをもつことにより,経営評価の機能が生かされることと,各領域のP−D−Sの評価結果が,経営全体のP−D−S各段階の評価に関連することにより,経営を巨視的に見直す動態的な評価が可能になるように考慮した。
A 評価機能の重視
教育評価においては,形成的評価の考え方が導入され,結果としての評価だけにとどまらず学習のプロセスや段階ごとの評価やたしかめにより,授業や学習活動の改善に成果をあげている。経営評価においてもこの考え方を援用して,学校経営改善の効果を高めることが必要である。年度末の評価だけにおわることなく,学期末や年度途中における評価活動も取り入れ,評価機能を生かすよう配慮した。
学期末用評価票による年度途中の評価活動を意図的に計画し,「経営評価領域構成表」の“学校経営の過程分析”に示された具体的手順を参考にして,問題の所在をさぐることができるように考慮した。年度途中のたしかめによって問題の所存を把握し,フィードバックにより問題点が改善されることは,時間軸にそった運営及び偶発的な事象に対応する弾力的な運営を可能し,より動態的な評価へ近づくことになると考えられる。
B 表現の工夫
動態的な評価にせまるためには,評価観点そのものの内容を動態的な側面から吟味して表現することが重要である。
動態的な経営観にかかわる要因は数多く考えられるので,それらの要因を一応整理しておく必要がある。学校の組織・運営が内部的に相互関連・調整しあうために一番大切な要因は,職員の相互協力による協働意欲であり,職員のモラールそのものであるといわれている。評価観点を記述表現をする場合,この協働意欲を支える内的な要因に視点をあてて吟味することが大切である。
例えば,目標系列の各領域の場合は,職員