研究紀要43号 学校経営改善に関する研究 学校経営評価に関する研究U (第2・3年次) - 013/049page
の意思の交流,意思の決定にかかわる内容からの吟味をすることであり,条件系列の各領域の場合は,人間関係にかかわる内容からの吟味をすることである。当評価試案では,それらの内容から吟味した結果,評価観点の文章表現に使用する語句として,「共通理解」「意見」「意欲」「人間関係」「役割分担」等を意図的に用いることにより,協働意欲への関心度を測定し,動態的な評価にせまろうとした。
(2) 実用的な評価票
県下の各学校で広く活用される評価票であるためには,総合的,客観的な評価票であるとともに,実用的な評価票であることが要求される。当試案では,この実用性についても検討し,使いやすく処理しやすい評価票の開発をめざし,形式面の工夫にも配慮した。
@ 二種類の評価票
経営評価を実施することは,評価結果からの改善資料を得るだけでなく,具体的な評価活動や作業をとおして,学校経営に対する職員の意識や認識を高めるにも効果がある。従って,年度末の評価のみより,評価計画にもとづく継続的,組織的,意図的な評価が有効であり,評価の手順や評価の実際,処理・集計等評価方法についての共通理解をしておくことは,大事な要素であると考えられる。
当評価試案は,評価活動が継続的に実施できるように,「学期末」「年度末」の二種類の評価票を用意し,年度初め,年度途中,年度末等の評価作業が一貫性をもって進められるように配慮している。学期末用は自由記述を主体に気軽に活用できるものとし,年度末用は評価観点による客観的評価を主体としながらも,自由記述による主観的な評価も併用し,評価結果の数的処理だけに片よらない多面的評価が行われるように工夫した。なお,自由記述による評価は,動態的な評価にも深いかかわりをもっているので,処理・集計による「学校経営改善資料」作成の際は,十分留意したいものである。
A チェック・リスト方式
評価の基準設定の方式をどのようなものにするかは,評価票作成における重要な課題の一つである。評価にあたって評価観点があっても,基準的なものがなければ,客観的な評価は難しいといわなければならない。それとともに,基準そのものの表記のあり方が大きく評価に影響する。これまで紹介されてきた評価試案をみると,評価観点ごとに基準の設定上の考察がはらわれているが,結果的には繁雑すぎることが大きな理由となり,あまり活用されないものにおわっている。
最近では,「学校経営のチェック・リスト」の開発がすすんでいる。この方法は,その使いやすさと診断的な特性が認められて,多くの現場で活用されるようになってきているが,当試案でもチェック・リスト方式の実用性を重視している。評価方法としては,評価尺度を特別に設けないで,評価観点自体に評価の基準性を含めるという考えに立って,評価要素を分析し,その中核的な概念を把握した上で文章化するという方法をとった。
しかし,学校が実際に評価を実施する上では,具体的な評定の段階を設定して,チェックしながら評価することになる。そして,その評定の段階は,各学校の主体性によって実施されるのが,最も望ましい状態であるということができよう。評定の段階を,三段階・五段階,または,+・−などに設定するためには,事前に話し合いの場をもって,職員相互間の十分な理解を得ておくことが大切である。
なお,チェック・リストによる評価は,当然数的処理が必要になり,その数値によって経営評価を行うことになるが,数値のみに着目すれば診断的な面が強調され,ある領域や特定の評価観点に目をうばわれる結果となる。
しかし,経営評価はあくまでも改善の資料