研究紀要第45号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -005/063page
その機能を十分発揮させるためには,評価―更新計画の過程を具体的にどうするかが問題になる。そのためには,各学校の教育課程の展開とその効果の判断に役立つ「教育課程評価試案」の開発が必要になってくる。教育課程の評価は,総合的,客観的に行うことが大切であると認識していても,その評価項目,評価観点を具体的にどうしたらよいかがよくわからないため,改善できないままに,従来の方法で形式的に行っているのが実情であろう。「教育課程評価試案」を研究開発し,現場に提供することは,各学校のかかえる諸問題を解決するための有効な資料になるものと考えられる。
1 教育課程評価の評価領域,評価内容を部分的に個々にとらえて評価するだけでなく,PDSの経営過程の中に位置づけて,その実態をとらえられるよう配慮した評価試案によれば,総合的な評価が可能になり,動態的に見る教育課程の経営にせまることができるであろう。即ち,評価―次年度計画との間を具体的にどうするかを解明するだけでなく,計画改善に役立つ資料を収集することができるものと考えられる。
2 教育課程の評価は,形式的評価の考え方に基づき,結果としての評価だけにとどまらず,日常の教育活動や日々の授業に生かされ,教育の実質的な効果に反映されてこそ,教育課程が改善されたといえよう。従って,学期末や年度末だけの評価に終わることなく,日常の評価やたしかめを重視し,評価の機能が十分に生かされるよう努めることが大切である。
3 教育課程の評価は,教育課程経営そのものだけの評価ではなく,最終的には,教育目標がどの程度達成されたかという結果や成果との因果関係で判断することが重要である。即ち,教育目標具現化のための教育計画としての教育課程を志向した評価であり,改善のための資料収集であることを忘れてはならないであろう。
(3)教職員の経営参加
教育課程経営をめぐる諸問題をつきつめれば,教育活動を支える経営活動のあり方が基底になると思われる。教育課程経営にかかわる組織・運営をどうするかという,教職員の経営参加のあり方が問われることになろう。高野桂一氏もこの経営参加については,次のように指摘している。「教育課程の経営こそが学校経営の中枢であり,それへの教師の参加こそが,他の組織体(経営体)にみることのできない特色ある経営参加なのである。」(註2)
この経営参加を学校の現実において考えてみたとき,それは教職員の相互協力による協働意欲であり,モラールの高揚である。教育課程経営の各過程において,どのように組織・運営すれば,教職員のモラールを高め,協働へ導くことができるかに着目して,その条件や方法を究明することが大切である。
1 教育課程の編成・実施・評価がそれぞれ効果的かつ効率的に進められ,経営過程として円環的に流れるためには,どのような組織で,どのような働きをさせるかが問題である。学校の創意工夫に期待されるところは大きいが,「組織的活動」の基盤をなすものが経営参加であり,それを支えるものが教職員のモラールと協働意欲である。
2 教育課程の各過程が,P−D−S−P′へと円環的に連動するためには,合理的なプロセスによって経営されなければならない。高野桂一氏は,このことについて次のように述べている。「教育課程の経営において,合理的なプロセスが重視されないと,教育課程改善についての教師全員の認識が不十分だったり,危倶が生まれたり,骨惜しみや過去の経験への執着というような抵抗が生じやすい,それを防ぐには,まず,各組織間や教師個人間の編成参加活動の連絡調整に努めなければならない。」(註3)この指摘を実際の学校経営において考えてみたとき,それは,各学校の実情に応じたきめこまかな計画化と教師間のコ