研究紀要第45号 「学校経営改善に関する研究 第1年次」 -038/063page
X 研 究 の ま と め
1 研究のまとめ
(1)第1章「研究の趣旨」においては,学校の教育活動の中心ともいうべき教育課程について,実効ある展開を求めるには,一般経営学において基本としてとらえるマネージメント・サイクルに正しく位置づけることが大切であり,研究の目標を経営的発想で現状を問い直すことにおくことを明確にした。
(2)第2章「研究の構想」においては,教育課程経営について,予測される教育現場のいくつかの問題点から,その課題を三つに要約し,それを本研究の課題としてとらえ,研究の方向性を明らかにするための視点を,それぞれの課題ごとに設定した。(「本年度の研究成果」に詳記)
(3)第3章は,研究構想に基づき研究を推進するための理論の構築を行った。特に,教育課程経営の意義や機能については,数少ない文献や論説のもとでは明確に規定づけることよりは,それらをもとに,現段階における教育課程経営の基本的な考え方をうちだすことにとどめた。また,本年度理論編の核として,第1年次研究課題追究のための,「動態的な教育課程経営の把握」「教職員の経営参加」の2点においた。
(4)第4章では,教育課程全般に関する実態調査から,研究に深い関連性のある設問を選び出し,実証的な追究を試みた。そして,教育課程経営に対する教育現場の問題点から,経営の各過程における改善のための視点を明らかにすることにつとめた。
2 本年度研究の成果
本年度は,本研究の三つの研究視点から,「動態でとらえる教育課程の経営」と,「教職員の経営参加」に焦点をあてて研究を進めてきた。はじめの動態的な教育課程の経営では,PDSの経営過程に即してその機能が発揮できるようにするため,「組織化(組織的活動)」,「計画化(計画的活動」の2点が導き出され,教職員の経営参加では,「調整化(調整的機能)」が重視された。
さらに,経営的発想で見直す観点として,組織化では,「全員参加の組織づくりと,組織の機能的活動」が,計画化では,「見通しのある計画化と,弾力性に富む計画づくり」が,そして,調整化では,「モラールの向上とコミュニケーションの機能」があげられた。さらに,これらの観点に立って,その実際を見つめ,問題点の対策・改善のための視点が明らかにされた。これは,今後の教育課程経営に関する研究の一つの指針となるであろう。
3 今後の課題
本年度の研究成果を上述のようにとらえたうえで,第二年次の研究課題を「教育課程評価の研究と評価試案の開発」に求めることを,改めて確認するものである。それは,教育課程の評価票の研究開発が,教育現場において最も要請されているのみでなく,評価―改善の積極的な取り組みこそ,教育課程経営の現状的課題であるということを,本年の研究より確信したからである。本年度小学校の問題点に対し,改善を示唆する実践事例の紹介とともに,県下中学校の教育課程展開にかかわる動向を総合的に調査し,その実態を明らかにして,改善・充実に資することも,第二年次の研究の一つの軸としていきたい。