研究紀要第49号 「登校拒否タイプ別治療方法の研究」 -019/038page

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7.事例


7−(1)神経症的登校拒否 ―分難不安―

l.はじめに

 分離不安による登校拒否は,主に低学年の子供にみられ,とりわけ,母子分離不安が中心である。
 家庭内の問題から,母親が,子供に対して過保護的・過許容的態度,または,不安に満ちた矛盾した態度を子供にみせるため,子供の不安をより一層強めることになり,母子が,心理的に離れられなくなるのである。
 このように,家庭間題に由来する不安を,母子ともども,学校間題にすり替えてしまうことにより,登校拒否がはじまることになるのである。

2.事 例

(1)主訴  登校拒否―分離不安
(2)対象  A・S 小学校1年男子 6歳
(3)問題の概要
 昭和56年5月25日来所
 小学校に入学して,2週間たったころ,腹が痛い,頭が痛いなどといって,しきりに身体の痛みを訴えるようになった。そのうち,早退するようになり,授業も満足にうけられなくなった。この状態が数日続いてから,しばらくして,まったく学校に行かなくなったので,両親は,困って医者につれて行った。医者では,身体の異常が認められず,両親もほとほと困ってしまった。そのとき,学校から教育センターを紹介され,来所した。その後,継続して来所するようになった。
(4)資料・情報
 1 生育歴
  ア.胎児期・出産時には異常が認められなかったが,さか子であった。体重は(3,550g)あった。
  イ.母乳でなく,ミルクで育てられ,5カ月で離乳した。
  ウ.「トイレットトレーニング」に失敗したため,3歳までおむつをしていた。
  エ.現在も夜尿や頻尿の傾向がある。
  オ.小さいときから,厳しすぎるしつけのため,父親をこわがっている。
  カ.本年4月に転居してきたばかりである。
 2 家族構成及び家庭環境
  ア.父:35歳‥・公務員で,厳しくしつけることが教育だと信じているため,命令,禁止などが多い。
  イ.母:33歳… 父親の方針に従っているが,不満を持っている。そして,子供を必要以上に,支配しようとする態度を示す。
  ウ.妹:3歳・‥ 本人は,かわいいと思いながらいじめる行動をとる。
 3 諸検査・検査
  本人の問題行動を理解するため,性格や情緒面での問題を知り,それらの問題が,本人をとりまく家族環境,とりわけ親の養育態度との関わりを調べてみたいと考えた。そこで,次頁図12のようをテスト・バッテリーを編成し実施した。
(5)診断
 1 親の拒否的・支配的を態度から,認められたいための攻撃的な態度がみられる。
 2 その攻撃的な態度は,内にこもりがちで発散できないでいるときもある。
 3 前の幼稚園での生活印象が強く出ているため逃避的になり,行動が消極的である。
 4 両親の生活態度をあらためること,特に,母子関係を変容させていかないかぎり,重症になることも予想される。
(6)指導方針
 1 本人に対して
  ア.遊戯療法を実施して,攻撃性を開放し,自立できるような生活態度と,調和のとれた自己実現をはかる。
  イ.なるべく多くの友達と接触させ,健全な友達関係をつくれるようにする。
 2 両親に対して(特に母親)
  ア.母と子の分離不安が強まっていることから,母親の情緒安定をはかるとともに,子


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