研究紀要第49号 「登校拒否タイプ別治療方法の研究」 -023/038page

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わり方について,センターの助言を求めるなど,一人ひとりの子供を大事にする姿勢で,本人と触れ合ったので,学校に早くとけこませることができたものと考えられる。

7―(2)神経症的登校拒否 ―Aタイプ―

1.はじめに
 このタイプは「優等生の息切れ型」ともいい,親からの心理的独立の挫折や自己内葛藤に起因するものが多い。
 一般に両親は知的に高く,子供に対する期待が大きい。父親はまじめでおとなしい性格であるが,母親はしっかりしており支配的である。両親,ことに母親の期待をとり入れ,よくしつけられた,いわゆる「よい子」として育った子供が多い。つまり,幼児期の反抗期にもそれらしい反抗もなく,いたずらやケンカなどの自己主張もみられず,親の枠組みの中にはめこまれ,自主性の発達が妨げられて,思春期まで,いわゆる「いい子」の評価を受けてきた子供である。
 思春期に入り,ある程度自我が成長してきて,親の枠に反発し,精神的に親から独立しようとするが,現実の自己が弱いためうまくいかない。また,学校の友達集団の中で,その自己の弱さに気づき,自己内葛藤を起こし,登校を拒否する。
 性格行動の特徴として,神経質・凡(き)帳面であり,完全欲が強く自分に対する要求水準が高い。まじめで成績はよいが社会性に乏しく、,対人不安が強く,孤独であるなどをあげることができる。また,中学から高校の思春期にかけて,急性に発生する事が多く,罪悪感が強いために閉じこもりが強い。
 援助指導にあたっては,今まできちんとしつけられ,ムダや失敗の経験が少なかった。優等生的な性格が挫折の原因であったことを反省させ,子供の自主性を育てるべく,本人にまかせることを中心に,今までの親のかかわり方の改善を図ることが大切である。

2.事 例
(1)主訴  登校拒否−Aタイプ
(2)対象  N・K 高校1年女子15歳
(3)問題の概要
 昭和56年6月20日来所
 中学校までは成績はトップクラスであった。高校に入学して5月ごろから生理が不順になり,体育の授業では,運動するのが下手なので,みんなに迷惑がかかるといい見学することが多かった。また,数学の授業での緊張が強く,時々腹痛や頭痛を起こし,養護教諭から薬をもらい飲んでいた。
 自分の劣っている部分について,友達から何か言われるのではないかと不安になり,そのことを考えると学校に行けないという。朝,登校時になるとフトンの中で体をふるわせていた。両親は,子供にいかに対処したらよいか困惑し来所する。
(4)資料・情報
 1 生育歴
  ア.胎生期・乳児期には特に問題はない。
  イ.幼稚園では,素直でおとなしい子であった。家でも親のききわけはよかった。
  ウ.小学校4年で初潮をむかえ,乳房が大きいことを気にし,運動が嫌いになる。目立つことは好まず,わかっていても手をあげて発表できなかった。成績は上位であった。
  エ.中学校入学後,勉強するたびに成績が向上し,常に首位を占めていた。自分から積極的に友達をつくることはしなかった。
 2 家族構成及び家庭環境
  ア.父:44歳…農業を営む。酒も飲まず真面目であるが,どことなく弱い感じを与える。婿である。
  イ.母:42歳…スーパーマーケットに勤務。職場や世間での評判はよく,しっかりものでとおっている。
  ウ.弟:13歳…姉と比べると学力は多少劣るが,外向的でスポーツを好む。
  エ.祖母:68歳…母と同様口が達者で,近所からの評価は高い。


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