研究紀要第49号 「登校拒否タイプ別治療方法の研究」 -029/038page
た。
ウ.5歳時にH市立H小学校「ことばの教室」で,吃音矯正の指導を受けた。
エ.7歳時(小学校2年)F市に転居。
オ.10歳時(小学校4年)K市に転居。
2 家族構成及び家庭環境
ア.父:44歳…公務員,仕事熱心で日曜日も出勤し,本人との接触が少ない。
イ.母:43歳…家事従事,感受性が乏しく子供の気持ちをとらえにくい。
ウ.兄:19歳…上京し別居中。
3 諸調査,検査
本人の問題行動を理解するため,性格や情緒面での問題を知り,それらの問題が,本人をとりまく家庭環境,とりわけ親の養育態度のかかわりを調べてみたいと考え,図14のようなテスト・バッテリーを作成し,実施した。(5)診断
1 幼少期から甘やかされて育ったために,社会的,情緒的に未成熟である。
2 吃音であったことから対人関係に,劣等コンプレックスをもち,コミュニケーションに対し強い不安をいだいている。
3 不登校時の登校刺激に対する反発として暴力行為をおこしている。(6)指導方針
(7)指導経過
1 本人に対して
ア.情緒的な発達をうながす援助をする。
イ.自己及び自己の行動について洞察させるため受容的態度で接する。
ウ.自主的・自律的な生活態度を育てるために実践可能な目標を設定し,実践させる。
2 両親に対して
ア.まず,登校刺激をやめ,家庭内暴力を起こさせる状態の解消を図らせる。
イ.カウンセリングを通して,養育態度の問題点に気づかせ,改善につとめさせる。
ウ.両親が,子供に,ゆずれない「強さ」を実感させる。
エ.家庭内で楽しく話し合う機会を持たせる。
回 本人に対するカウンセリング
指導方針とのかかわり方
両親に対するカウンセリング
1〜2
10
月
◎ 生活状況について話を聞く。
○ 家はでるが登校せず,公園の周囲で遊んでいる。
○ 友達はほとんどいない。
○ 勉強は自分の人生にとって意味がないのでやらない。
○ 将棋さしになりたい。
※ Y−G性格検査,GAT不安傾向診断検査実施子 よく来所してくれたこと。自分の悩みや不満について話す気持ちになったら話してくれるように言う。
親 諸検査の解釈結果を知らせる。
○ 指導方針について話す。
○ 自己洞察をすすめるには継続してカウンセリングを受けた方がよいことを話す。○ 主訴の内容についてきき出す。
○ 家庭内暴力の様子をきき出す。どんな時に,なぜ暴力をふるうのかを考えさせる。
○ 生育歴についてきき出す。
※ 両親に対して,エゴグラム,親子関係診断テスト実施
※ 登校拒否に関しての参考図書を紹介する。
3〜19
11月〜3月◎ 暴力をふるうことについて話し合う。
○ ジュースを買いに行って友達の姿をみて逃げ帰ってきた時,母親がしつこくようすを聞いたため。
○ 話しかけたのに母親が返事をしなかったため。
○ 夜食に本児にだけカレーライスを出したら,嫌なのを知っていて食べさせるの
子 暴力をふるいたくなる時,学校に行けない時の気持ちを受容する。
○ 暴力をふるわれた母親の気持ちを話し合ってみる。
○ 一日の生活のリズムを話し合い自分の力で改善できるかどうか考えさせる。
○ 継続的に運動を続けることの意義について話をする。
親 暴れて物を要求したり,自分
○ 本児に接する態度をどのようにかえていったらよいか話し合う。
・頭では,わかっているが,急に暴れられると,恐ろしくなって逃げ腰になる。
・興奮がおさまって自分の部屋に戻るまで,じっとがまんしている。
○ 夫に対する不平,不満を強く訴える。