研究紀要第50号 「学校経営改善に関する研究 第2年次」 -029/071page
(4) 教育課程評価票作成の視点
教育課程評価の評価対象並びに評価要素が設定されたので,教育課程評価票の作成にあたっては,県下の各学校で広く活用されるための視点について考えてみる。ここでは,特に経営的発想に基づいて,教育課程を見直そうとする教育課程経営の考え方を重視し,次の五つを作成の視点としてとりあげた。
[1] 経営過程を重視した動態的評価
評価対象を部分的に個々にとらえて評価するだけでなく,経営過程の中に位置づけて実態をとらえ,次年度の経営改善に生かすことができるように配慮する。P―D―Sの経営管理がP―D―S―P'へと循環的につながりをもつことにより,経営評価の機能が生かされることと,各領域のP―D―Sの評価結果が,経営全体のP―D―Sの評価に関連することにより,経営を巨視的に見直す動態的な評価が可能になるよう考慮する。要は,教育課程の評価が部分的・断片的な結果を見るための機能に終わらないようにしていかなければならないということである。
[2] 評価機能の重視
教育評価においては,形成的評価の考え方が導入され,結果だけの評価にとどまらず,学習のプロセスや段階ごとの評価やたしかめにより,授業や学習活動の改善に成果をあげている。教育課程経営の評価においても,この考え方に立ち,その改善・充実を図っていくことが必要であろう。
年度末の評価だけに終わることなく,学期末や年度途中の評価活動も取り入れ,評価機能を生かすよう配慮する。年度途中のたしかめによって問題の所在を把握し,フィードバックにより問題点が改善されることは,時間軸にそった運営及び偶発的事象に対応する弾力的な運営が行われることになり,動態的な評価の考え方が可能になるのである。
[3] 経営的発想に基づく見直しの観点
見直しの観点としてとりあげた「組織化」,「計画化」,「調整化」も,組織体としての学校が,全職員の協力態勢のもとに,意図的・計画的に教育課程が経営されているかどうかを見直すための観点であり,究極的には協働意欲にかかっている。従って,評価の観点を記述表現する場合,協働意欲を支える内的な要因に視点をあてて吟味することが大切である。即ち「共通理解」,「意識」,「意欲」,「人間関係」,「リーダーシップ」,「組織的取り組み」,「役割分担」,「合理的・能率的手順」,「計画的推進」等の語句を意図的に用いることにより,協働意欲への関心度を測定し,動態的な評価に迫っていくようにする。
[4] 新学習指導要領に即した評価
昭和55年(小学校)及び昭和56年(中学校)の4月より,新学習指導要領が全面実施されている。各学校では,この学習指導要領の改訂のねらいである「人間性豊かな児童(生徒)の育成」,「ゆとりのあるしかも充実した学校生活」,「基礎的・基本的内容の重視と個性や能力に応じた教育」の実現とそれぞれの学校の教育目標の具現化をめざし,各教科の目標,内容の定着に努めている。したがって,教育課程の評価に当たっては,評価対象・評価要素・評価観点の吟味の際,新学習指導要領にそうように工夫することが大切である。
[5] 実態に即した創意ある評価
教育課程基準の改善に関する答申の中で,「教育課程実施の効果は,各学校における自発的・創造的な活動に期待するところが大きい。(中略)…学校運営の改善と教育の実際の場における指導方法の句上を図る必要がある。…」と述べられている。これは,各学校の創意ある主体的な学校経営の確立が,新教育課程の趣旨から,最も期待されていることと受けとめられる。
教育課程評価の基準を設定するに当たっても,それぞれの学校の実態や評価の目的により,主体的に行われなければならない。したがって,当センターが開発を目指している評価票試案の評価対象・要素・観点は,一般的,共通的な内