研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -021/090page
(1) 調査の目的・内容・方法
[1] 調査の目的
このアンケート調査は,県内の小学校における音楽学習についての実態を把握するとともに,特に歌唱学習に関する課題を明らかにし,指導の改善・充実を図ることを目的とする。 [2] 調査の内容・方法
小学校における音楽学習について,児童が好む学習内容,授業への関心,発声法,変声期などにかかわる質問事項を設定し,アンケートによる意識の調査を行う。 [3] 調査の期間
昭和57年10月1日(金)〜11月18日(木) [4] 調査の対象・抽出方法及び児童数
1.対象
小学校3年生から6年生までの男女
各学年1クラスを摘出
2.方法
・県北地区 5校 ・県南地区 5校
・会津地区 5校 ・相双地区 3校
・いわき地区 5校 合計 23校
学校の規模による分類
・大規模校 7校
・中規模校 8校
・小規模校 8校
3.児童数 1,973名
3年 4年 5年 6年 計 男 245 254 226 263 988 女 246 253 247 239 985 計 491 507 473 502 1,973 [5] 調査結果の分析の観点
1.一般的傾向
2.学年別の特色
3.男女別の特色(2) 調査の結果とその考察
問1 あなたは,音楽の時間のとき,どんな勉強がすきですか。 (1) 結果
表1:児童が好む学習内容
(数字は%)
\ 学年 項目 \ 3年 4年 5年 6年 男 女 男 女 男 女 男 女 楽器を演奏すること
(独奏する,合奏する)26.5 34.7 24.2 29.0 31.5 35.5 28.1 35.2 歌をうたうこと
(独唱する,合唱する)23.8 26.5 22.9 28.2 12.0 28.5 11.3 26.3 音楽をかんしょうすること
(レコード,先生や友だちの演奏をきく)34.2 26.2 36.7 29.2 43.6 28.5 47.9 28.5 ふし作りをすること
(旋律を作る,作曲をする)6.3 3.0 4.8 2.4 5.0 2.9 2.8 5.2 音楽のきまりをおぼえること
(楽ふを読んだり,書いたりする)9.2 9.6 11.4 11.2 7.9 4.6 9.9 4.8 (2) 考察
この項は,音楽学習の内容や活動を,器楽歌唱・鑑賞・創作・楽典の5つに分けて,児童は,どのような学習内容を好んでいるかについて調べることを目的としたものである。
[1] 学年や男女によって多少の差異は認められるが,児童は,おおよそ器楽・歌唱・鑑賞などを好む内容に選んでいる。
[2] 楽譜を読んだり,書いたりすることや,児童自らの音楽性を自由に表現し,創作することについては,全学年を通して男女とも興味・関心がきわめて低い。これは,音楽を理論的な面から学習したり,即興的に表現したりする機会が多くない表れとも思われる。
[3] 器楽については,3年で男子26%,女子34%あったものが,4年で少し低くなり,5年で再び高くなってくる。“音色に気をつけて旋律楽器及び打楽器を演奏すること”(学習指導要領)の内容をうけて,高学年では,幅広い器楽の学習が進められ,楽しくアンサンブルを経験することの結果として,このような好意を示す児童が増えていると考える。
[4] 歌唱については,学年が進むにつれ男女の差異が著しくなり,特に男子は興味・関心が低くなっていく傾向がみられる。次に,歌唱が好きと答えた児童についてグラフで示すことにする。