研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -022/090page
女子は,3年から6年まで28%前後と平均した好意を示しているのに対し,男子は,3年では24%であるが,5年・6年と高学年になるにつれて低くなり,3年の約半数になる。なぜ,男子はこれほどまでに歌唱学習の面で高学年になるにつれてその意欲を失ってしまうのであろうか。この時期の児童は心身の成長とともに変声期をむかえる。男子では特にその兆候が顕著に表れて,1オクターブも低い大人の声に変わる。この声変わりの過程における不安な心は,高学年になっての歌唱学習をする意欲の低下と深いかかわりがあるのであろうか。このことは“変声期についての意識調査”と関連させて明らかにしたい。
[5] 鑑賞については,児童の多くが好きな学習として高い関心を示している。男子では学年が進むにつれ,歌唱意欲が落ちこんだぶん鑑賞の方へ移行されている点が興味深い。器楽や歌唱では,学習内容が深まるにつれ,より高度な表現技能が要求されるようになってくる。このとき児童は表現力を高めようと努力することを避けて,ややもすると安易な気持ちで,ただ聴いているだけで時間を過ごせる鑑賞を選ぶ傾向が認められる。
問2 あなたは,音楽の時間がくるのを楽しみにしていますか。 (1) 結果
表2:音楽の時間について
(数字は%)
\ 学年 項目 \ 3年 4年 5年 6年 男 女 男 女 男 女 男 女 たいへん楽しみにしています 16.6 51.0 16.3 37.9 4.2 31.9 3.6 26.0 すこし楽しみにしています 40.7 41.2 31.7 40.2 31.4 49.6 26.3 46.8 あまり楽しみにはしていません 29.9 7.8 35.8 16.9 41.5 15.7 48.6 24.2 ぜんぜん楽しみにはしていません 12.8 0 16.2 5.0 22.9 2.8 21.5 3.0 (2) 考察
この項は,児童の音楽学習への興味・関心意欲を調べることを目的としたものである。音楽の時間を“楽しみにしている”と答えた児童は,3年で男子57%である。そして女子では実に92%と大きな関心を示している。これは,低学年で遊びの要素を多く取り入れながら身体表現などをして楽しく音楽の学習を経験したものに加えて,3年では,新たに器楽が日常の学習に導人される。そのために,学習内容が幅広く,変化に富み,学習がより一層深まる。このようなことが,調査の結果として表れたものと思われる。
ところが,音楽の時間を楽しみに心侍ちしている児童は,高学年になるにつれて少なくなっている。このことを更にくわしく検討するために,その変化の様子について男女別に示したものが次の図3である。
3年,4年とも“たいへん楽しみ”と答えた約17%の男子は,5年になって4%と急激に落ち込んでしまう。更に,音楽には比較的好意を示している女子においても,51%から