研究紀要第52号 「教育課程の実施に関する研究」 -033/090pagepage

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筋つまり,声帯を中心とした発声器官に不用の力が入る悪い状態になる。そのため声帯は弾力性のある正常な運動が妨げられ,共鳴器官は萎縮してしまう。したがって,歌唱の際は胸式呼吸にならないように注意することが大切である。

胸式(鎖骨)呼吸
胸式(鎖骨)呼吸

●腹式呼吸の練習法

仰向けに寝て腹の上に手を置き,安静時の呼吸をする。手を置いた周辺の上下動を感じる。次に軽く咳をしてみる。咳をすると同時に腹部が働き横隔腹と腹筋の関係がよくわかる。十分に吸い込んだ息を長い時間かけて息にムラがないように静かに「スー」と出す。又,短く,するどく出すときには,腹が引っ込んだ状態のまま保たれるようにする。この動きは,声をだしている間,いつも自由に使いこなせるようにすることが大切である。

6.おわりに

この研究では,県内の小学校における歌唱指導の実態を把握するため,児童を対象にアンケートによる意識調査を行った。そして,その結果から今後の歌唱指導上の課題を明らかにし,それらに基づいて,指導の改善・充実を図る具体的な手だてについて考察した。すでに,この調査から明らかなように,低学年の児童の場合は,音楽を愛し,歌唱学習を好んでいること,高学年では,歌唱学習に関しては,興味・関心が薄らいでいることがわかった。この高学年における歌唱ばなれの原因について分析してみると,

友だちの前では恥ずかしくて十分な歌唱表現ができない。
美しい声で歌う自信がない。
声変わりになって思うように声がだせない。
などが明らかになった。

この外,歌唱指導上の様々な問題を解決するためには,まずは教師自らが歌唱を愛好する心情にあふれ,その上にたって,日常の様々な活動を通して楽しい雰囲気の学級づくりを目指すことが,極めて大切であることがわかった。

すなわち,教師は,児童の発達段階に応じて,技能を高めつつ,楽しく豊かな学級活動の中で,心から音楽にひたり,意欲的に歌唱表現ができる指導をしなければならないと思われる。

このことによって,歌唱の美しさ楽しさが味わえたとき,児童は歌唱学習にとどまらず,広く音楽的技能と,音楽を愛好する心情が一体となって高められるものと考える。

最後に,アンケート調査を実施するにあたり,御協力をいただいた県内小学校の諸先生方に対し厚く御礼申し上げたい。


参考文献
・小・中・高等学校(音楽科・芸術科)
 学習指導要領・指導書・解説
 文部省
・音楽科の授業入門  木村信之  明治図書
・音楽科基礎指導法  音楽之友社
・中等科音楽教育法  音楽之友社
・研究報告書第172号  埼玉県教育センター
・発声法の手引  狩野了衛  音楽之友社
・唱歌法  沢崎定之  音楽之友社
・児童発声  品川三郎  音楽之友社
・芸術歌唱のための発声法  E・ジットナー  音楽之友社


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